【理事会声明】歯科医師による新型コロナワクチン接種は
法的な根拠を担保してから実施すべき

2021年6月17日
千葉県保険医協会


厚労省は4月26日付で事務連絡を出し、歯科医師による新型コロナワクチン接種のための筋肉内注射の実施について、法的な整理を示した。
 その事務連絡が発出されて以降、全国各地で実技研修が行われ、接種の迅速化の一手段として全国紙および各種メディアからの報道が続いている。歯科医師の間では少しでも社会に貢献できるのなら協力したいとの前向きな意見がある一方で、万一の医療事故に対する責任の所在や法的な根拠はどうなのか、と心配する声も聞かれている。
 歯科医師法第1条は歯科医師の任務を「公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もつて国民の健康な生活を確保する」と規定している。新型コロナウイルス感染症が国民の生命と健康を脅かす中で、その対策に参画することは歯科医師としての職業的使命でもあり、必要に応じて安全性を担保してのワクチン接種への協力を惜しむものではない。しかし、新型コロナワクチン接種の体制確保は、ワクチンの開発・供給を巡る動向の中で充分に想定しえた課題である。厚労省が、円滑に対応できるよう予め法律による対応に動かず、人材の逼迫が起こってから緊急避難的に解釈する対応をとったことには問題がある。
 事務連絡は、ワクチン接種のための筋肉内注射は医行為に該当し医師法第17条に違反するとした上で、3点の条件(①歯科医師の協力なしにはワクチン接種が実施できない、②歯科医師に筋肉内注射の経験があるか必要な研修を受けている、③被接種者の同意)を満たす場合、「公衆衛生上の観点からやむを得ないものとして、医師法第17条との関係では違法性が阻却され得るものと考えられる」とし、集団接種会場に限り、医師の監督下で歯科医師によるワクチン接種の筋肉内注射を可能とした。これは歯科医師によるPCR検査の検体採取についての法的整理と同じ手法でである。
 歯科医師による新型コロナワクチン接種については、PCR検査の検体採取以上に深刻なリスクを伴うことは明らかであり、検討には一層の慎重さが求められる。それにもかかわらずPCR検査の検体採取と同様に行政解釈により歯科医師の実施を可能とすることは不適切である。本来的には国会審議を通じて必要性と安全性について広く合意し、立法により適法性を確保した上で実施させるべきものであり、単なる事務連絡で済ませられるような話ではない。
医師法の定めを超えて歯科医師の協力が必要と判断するのであれば、責任を現場任せにして解釈と条件だけを示すのではなく、法律を根拠に実施できる条件を整えることが行政の責任である。ワクチンが必要な国民に円滑に行き渡るようにするとともに、これからも起こりうる緊急事態への対応に協力する歯科医師の法律上の位置づけを明確にするよう厚労省の責任ある対応を求める。