高3まで助成する自治体4割以上に増加
県内の子ども医療費助成制度(令和2年8月1日現在)の実施状況が明らかになった。県内で高校3年生まで所得制限なく、入院・通院ともに0円とし、完全に無料化しているのは8自治体。自己負担金を導入している15自治体を含めると23自治体。対象年齢を中学校3年生まで完全無料化しているのは5自治体、自己負担金や所得制限を導入しているのは26自治体となっている。
前回協会紙に掲載した平成30年8月1日時点と比較すると、高校3年生まで対象とする市町村は16から23自治体へ増加し、県内の42・6%まで拡大。助成対象年齢を引き上げる自治体は、着実に増えている。
県の公約年令自治体上乗せ背負う
これらの拡充は協会が平成3年から住民とともに継続して取り組んできた結果だと評価できる。近年、拡充の大きな起点となったのは「中学校3年生まで入院・通院無料化」を公約に掲げた森田健作知事が平成21年に千葉県知事に当選したことが挙げられる。県基準は入院部分が平成25年に中学校3年生まで拡充されたが、通院については据え置かれたままとなっている。
各自治体は知事の公約実現を視野に入れ、先行して対象年齢を引き上げるなど住民の要求に応えてきている。しかし、一向に通院の県基準は小学校3年生までとなっており、それ以上の年令分は、自治体が上乗せする独自助成として実施している。住んでいる地域で年令の格差を無くすために一日も早く県基準を拡充することが求められる。
千葉市が制度改悪 8月から窓口負担増
そうした中、千葉市は令和2年8月診療分から子ども医療費受給券を提示して処方される調剤について、これまで自己負担額無料としていたものを、窓口で自己負担を新たに求める施策へ改悪した。具体的には0歳から小学校3年生までは院外処方1回につき300円、小学校4年生から中学校3年生までは500円の負担となる。千葉市担当者によると、この導入により年間約2億5千万円の支出を削減し、そこで捻出した財源を小中学校に設置されたエアコンの管理運営費(光熱水費)や児童相談所の体制強化など、子育て施策に充てると説明している。
院外処方による調剤の自己負担金導入自治体は全国でもわずかで、県内では初の導入となり、他の自治体への影響が危惧される。また、院内処方と院外処方で自己負担の有無に違いが生じることになるが、その合理的な理由は見当たらない。
現在、日本に住む子どもの7人に1人が貧困状態にあり、過去最少の出生率で少子化が加速している。子どもを産み、育てる環境の整備は我が国の喫緊の課題である。コロナ渦で失業が増える中で医療費負担増は、更なる受診控えにつながる可能性が懸念される。 協会では、7月に子ども医療費助成制度の院外処方による調剤料一部負担金導入の凍結を求める緊急要望書を千葉市長に提出。今後も子どもたちが安心して医療を受けられるよう要請していく。
来年4月県知事選政策争点に
昨年9月議会、3月議会において県議の安部紘一氏(自民)は協会と事前レクを行った上で「この3年間にわたり千葉県市会から県知事や当局に対し『千葉県子ども医療費助成事業補助金』の対象年齢を公約に従って中学校3年生まで拡大するよう求める『重要要望』が複数出されている。また、自民党の移動政調会にも毎回、各市町村から要望が出されている。県執行部はどのように受け止めているのか」と質した。これに対し、横山健康福祉部長は「現行の制度は視線の必要性の高い年齢をカバーしている」、「今後も持続可能な制度として安定維持運営を行う」、「早期の国制度化を働きかける」との答弁に留まり、一切公約には触れず、反故にされたままである。
来年4月には県知事選が予定されている中で、「通院部分の中学3年まで県基準拡充」は子どもたちの保健対策の充実及び保護者の経済的負担の軽減に寄与する優先課題として、取組みを強めていく必要がある。