声明・主張・談話
- 2024.10.17 日本被団協のノーベル平和賞受賞をお祝いします
2024 年のノーベル平和賞を日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)が受 賞されました。私たち千葉県保険医協会は、「核戦争の防止と核兵器廃絶が現代 に生きる医師の社会的責任」として、 署名や講演会の取り組みを行ってきた団体 として、心よりお祝いを申し上げます。
ノーベル賞委員会は、その授賞理由を、「核兵器のない世界を実現するための 努力と、核兵器が二度と使用されてはならないことを証言によって示してきた こと」を評価し、そうした活動を通じて「核兵器の使用は道徳的に容認できない という強力な国際規範」=「核のタブー」の形成に貢献してきたことを挙げてい ます。また、被爆者の方々が、「筆舌に尽くしがたいものを描写し、考えられないこ とを考え、理解を超えた苦痛を何とか理解する手助け」し、「肉体的な苦しみと 悲痛な記憶にもかかわらず、自らの経験を平和への希望と約束を育むために用 いることを選んだ」として、その証言活動を高く評価しています。 私たちもこの崇高な授賞理由を心にしっかりと刻み、この国際規範の一層の 形成に寄与したいと思います。
受賞の瞬間に、広島の会見場には被団協 ・ 箕牧代表委員と高校生平和大使のみ なさんが同席していました。被爆者の方々の「証言」と「経験」がおそらく引き 継がれているのでしょう。 その広がりはまだ、 わずかなものかもしれませんが、 確実に新たな世代に、メッセージとして受け継がれていくことと思います。
「核のタブーは人類にとっての平和な未来の前提条件」とノーベル賞委員会 は明言しました。今回の被団協の平和賞受賞が、この「平和な未来の前提条件」 の拡大を大きく促すことを期待したいと思います。
- 2024.10.13 今次診療報酬改定の不合理是正と速やかな期中改定を求める
- 内閣総理大臣 石破 茂 殿
厚生労働大臣 福岡 資麿 殿●抑制ありきの低医療費政策の転換を強く求める
2024 年度診療報酬改定は医療サービスの質の向上や医学的根拠よりも、財務省の意向で医療費抑 制政策が優先された大変不合理なものであった。改定率は本体+0.88%のうち使途の限定されない 財源は+0.18%に限られた上、後に述べる3疾患に対する医学管理料の適正化等で-0.25%とされ てしまった。
また投薬、検査等の広範な分野で汎用点数が引き下げられ、医科内科診療所を中心に 実質マイナス改定であった。診療報酬は言うまでもなく医療機関の経営原資のみならず、社会保障 として患者の受ける医療や介護の水準を決定付けるものである。低医療費政策は患者に低水準の医 療を押し付けることと同義である。
現場を無視した低医療費政策の即時転換を求める。
●諸物価高騰への対応と更なる賃上げのために基本診療料の大幅引き上げを求める
2024 年度診療報酬改定では「賃上げ」への対応として初・再診料等、入院基本料等の基本診療 料がわずかに引き上げになったが、そもそもこれまで医療機関の経営原資である基本診療料が低す ぎたことが根本問題であり、「賃上げ」どころか今般の物価高騰への対応にも足りず医療現場は窮 状に喘いでいる。
諸物価高騰等への対応のため、一刻も早く基本診療料の大幅な引き上げを行い、 医療機関が安心して診療できる体制を構築することを求める。
●不合理極まりない高血圧、脂質異常症、糖尿病の生活習慣病管理料への強制誘導
2024 年度診療報酬改定で特定疾患療養管理料の対象から高血圧、脂質異常症、糖尿病の3疾病 が外れ、受け皿として生活習慣病管理料(Ⅱ)333 点が新設された。同管理料は外来管理加算や特 定疾患処方管理加算が包括されたため、特定疾患療養管理料算定と比較して保団連調査では月 1 回診療で▲13点、月2回診療の場合、▲340点の減額とされている。加えて処方箋料も8点引き下 げられ、内科系診療所経営に大打撃を与えている。
また、千葉県保険医協会が行ったアンケート調査でも、算定要件である患者の同意取得や療養計 画書の説明のため、改定前と比較して診療時間が増加しているにも関わらず、減収となったという 回答が多く寄せられた。アンケート調査では算定要件で診療時間が長くなりスタッフの負担が増え たのに減収を強いられ困惑している医療機関の声が多く寄せられた。 医療現場に無用な混乱と負担 を持ち込んだ責任は重大と言わざるを得ない。
ただちに特定疾患療養管理料の対象から糖尿病、高血圧症、脂質異常症の3疾患を除外すること を速やかに見直し、 さらに改定前同様に生活習慣病管理料と外来管理加算および特定疾患処方管理 加算の併算定を認めることを求める。
以上は改定内容の不合理の一部に過ぎないが、国は期中改定や柔軟な運用なども含め、速やかな 不合理是正を行うべきである。以上
- 2024.10.02 マイナ保険証利用実績が低い施設に不当な圧力をかける個別的な働きかけの中止を求める
厚労省は8月30日に開催した第 181回社会保障審議会医療保険部会で、マイナ保険証の さらなる利用促進の取り組みについて追加の提案を行った。内容は、マイナ保険証の利用実 績が低い医療機関・薬局に対する個別アプローチと、マイナ保険証を基本とする仕組みへの 円滑な移行を見据えた周知広報であり、さらなる利用促進に向けて梃入れを図るものとな っている。
5月からの集中取組月間で多くの施設がPR に協力したにもかかわらず、7月時点の利用 実績は11.13%にとどまった。これはPR 不足によるものではなく、患者がマイナ保険証の メリットを実感できず現行の健康保険証による受診を選択したという当然の結果に過ぎな い。本会は、医療機関に利用率低迷の責任を押し付け、不当に圧力をかける推進策に強く抗 議し、即刻中止を求める。
低利用率の施設は「療担違反の恐れ」と威圧
厚労省は提案の中で、利用実績が著しく低い医療機関を取り上げ、「患者がマイナ保険証 を使う機会を奪っている」可能性を示唆し、そうした場合には療養担当規則違反となる危険 性にまで言及した。この指摘に対しては同審議会で、診療側の委員から「威圧的な表現」と 不快感を示す発言が出されたが、まさに医療機関をマイナ保険証推進のツールとして位置 づけ、利用実績の低い施設を障壁とみなす姿勢が表れたもので断じて許されない。また、オ ンライン資格確認によるトラブルが発生する中、患者に10割負担を押しつけないために現 行の健康保険証による受診を勧奨することは診療をスムーズに行う点で合理的であり、利 用促進に反する行為とはいえない。
厚生局からの個別働きかけは不当 PR は義務ではない
また、具体的な働きかけとして、利用実績が著しく低い施設に選定された旨をメール等で 事前通知した上で、厚生局を通じて個別事情を確認することが提案された。厚労省は医療機 関によるPR の状況について「利用促進にあたり困ったことがあるのではないか」と懸念し、 必要な支援を検討しているようだが、問題認識のピントがずれていると言わざるを得ない。 そもそもPR への協力は任意であり、利用実績が上がらないために厚生局から指摘を行う のは不当な圧力だ。診療と無関係の実務負担を強いられる合理的な理由は一切ない。
- 2024.09.22 千葉県知事への要望
現行の健康保険証の新規発行停止が12月2日に迫る中、協会は5月以降のマイナ保険証のトラブルについて実態調査を行った。
会員へのアンケート調査では未だに会員の7割からマイナ保険証による資格確認ができない等のトラブルがあったと回答があり、その際、約6割で手元にあった健康保険証に資格確認を行うことによりトラブルを回避したことが明らかとなった。
また、患者から12月2日以降、「健康保険証がなくなってしまう」と誤解し、窓口に相談してくる事例も多く報告された。県内市町村国保や後期高齢者医療保険においては2025年7月末まで有効な被保険者証を発行しているため、有効期限内は使用することが可能である。
また、今年の12月以降に順次、健康保険証の新規発行が廃止された後に、マイナ保険証を所持していない場合には「資格確認書」が自動発行される予定であることを知らせていないことは大変問題が大きく、まるで「マイナ保険証」を取得しなくてはいけないかのような周知に映っている。
一方、マイナ保険証を所持している場合には「資格情報のお知らせ」が発行され、保険証の廃止後にはマイナ保険証と2枚持ちが課されていることも説明されていない。
協会は9月5日、このように偏った説明の条件下では、今後医療機関の窓口において様々なトラブルや混乱が生ずることが懸念され、多くの説明が必要となる可能性が高いといわざるをえないため、千葉県知事に対し、「健康保険証の存続および廃止の延期を国へ上申してください」県民への健康保険証廃止(資格確認書発行)に関する周知徹底の要望緊急に要望をまとめ提出した。
要望書では患者や被保険者に対する保険証に関する説明は、本来、保険者と管轄する行政が担うべきものであり、保険証の廃止期日が目前に迫りながら、現状では説明責任が全うされていないことを指摘。5項目にわたり要請した。
要望項目
1,健康保険証の新規発行を2024年12月に停止することなく、健康保険証を存続させるか、もしくはとりあえず延期させるよう、国に対して上申してください。
2,県内54自治体の国保に対して、8月に発行されている健康保険証は2025年7月31日まで有効であることを各加入者に周知徹底してください。
3, 来年2024年7月末で有効期限が切れたあとは、マイナ保険証を取得していない方には、当面の間、各自治体から健康保険証と同様の「資格確認書」が発行されることを周知徹底し、住民の不安を払拭してください。
4,各自治体における資格確認書の発行作業について、マイナ保険証の所持の有無によって発行の判断を行う方法では、マイナ保険証の所持データーを発行システムに反映させる際にタイムラグが生じる場合や、加入者がマイナ保険証を所持していることを失念している場合もあり、トラブル発生の懸念があります。
今年度から来年度にかけて、廃止後の当面においては、資格確認書を全ての被保険者に送達するよう方針を千葉県として全自治体が被保険者全員に送達するようにしてください。
5,マイナ保険証を保有している方のうち、保有手続の際「受診時には健康保険証を利用」を想定していたものと思われますが、トラブルが収束していない現状や高齢者などがマイナ保険証の利用が厳しく、窓口で困惑されている事例がみられます。各自治体の国保に対し、マイナ保険証の利用「解除」が10月より可能であることと合わせて、周知をしてください。
以上
- 2023.11.30 【声明】イスラエルとハマスは即時停戦し、ガザ地区へ人道支援を
【声明】
2023年11月27日
千葉県保険医協会
会 長 岡野 久
平和環境対策部長 野崎 泰夫
イスラエルとハマスは即時停戦し、ガザ地区へ人道支援を
10月7日、パレスチナのイスラム組織「ハマス」によるイスラエルへの大規模な攻撃が始まり、それに対するイスラエルによる報復攻撃によって、地中海東岸のガザ地区では多数の市民に死傷者が出ており、建物などの破壊も著しい状況となっている。ガザ地区最大の病院であるアル・シファ病院では、燃料や物資不足で必要とされる治療を受けられない状況が続いていると伝えられている。国連のグテーレス事務総長は「ガザ地区は子供たちの墓場になりつつある」と表明するなど、その状況は深刻さを増すばかりである。
これまでに、多くの一般市民や子どもたちが犠牲になり、多数の医療機関も攻撃を受け必要とされる医療を提供することができない機能不全に陥っている。軍隊が民間人を殺傷し、医療機関を破壊することは国際人道法上、許されるべきことではない。加えて、多数の人質をとっていることも決して許されることではない。ようやく、11月22日に「戦闘を4日間、一時的に休止」するとの報道がなされたが、まさに”一時的”なものにすぎず、根本的な解決には程遠い状況であることは論を待たない。
イスラエルとハマスの大規模衝突に関して10月27日、国連総会は双方に対し「敵対行為の停止につながる即時かつ持続的な人道的休戦」を求める決議を121ヵ国の賛成多数で採択した。しかし、この決議に対し14ヵ国(イスラエルや米国など)が反対、日本政府は棄権した。不戦の誓いともいうべき日本国憲法第9条を持つ日本政府が棄権したことに、言いようのない怒りを覚えるものである。9条は「正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」と高らかに謳っている。憲法に9条の条文を有する日本政府は、こうした非人道的な戦闘行為の終結に向けて、国際社会の中で一層の役割を発揮すべきと考えるものである。
私たち医師・歯科医師は、人々の生命と健康を守っていくため、日々診療を行っている。生命と健康が著しく損なわれている現状から一刻も早く脱却するために、全ての戦闘行為を即時停止し、病院などが破壊されているガザ地区に対する人道支援を強力に求めるものである。
以上
- 2023.11.07 「GX脱炭素電源法(束ね法案)」の強行可決に抗議する
2023年6月15日
「GX脱炭素電源法(束ね法案)」の強行可決に抗議する
千葉県保険医協会
会長 岡野久
5月31日、60年を超える原発の運転期間延長を認めることなどを内容とする「GX脱炭素電源法案」(原子力基本法、原子炉等規制法、電気事業法、再処理法・再エネ特措法改定案の5つの束ね法案)が、可決・成立した。
同法によって、これまで「原則40年、最長60年」とされた原発運転期間の制限を、運転停止期間等を60年に上乗せして運転できることとし事実上廃止、経年劣化している原子炉の長期運転が可能になった。また、その運転期間の制限条項をこれまでの「原子炉等規制法」から「電気事業法」に移管された。
2011年の未曽有の福島第一原発事故は、原子力発電所の安全神話が根底から崩れた。そのため政府は、「東京電力福島第一原子力発電所事故の教訓を踏まえ、原子力規制行政に対する信頼の確保に向けた取組を継続的に行っていく」「原発依存度については、省エネルギー・再生可能エネルギーの導入などにより、可能な限り低減させる」として、原子力規制行政の見直しや、原子力によらないエネルギー政策の構築を掲げてきたはずである。今回の改正法は、福島第一原発の教訓を踏みにじり、原子力発電事業推進への回帰という大きな転換がみられ、見過ごすことができない内容となっている。
加えて、原子力基本法に「国は、エネルギーとしての原子力利用に当たっては、原子力発電を電源の選択肢の一つとして活用することによる電気の安定供給の確保、我が国における脱炭素社会の実現に向けた発電事業における非化石エネルギー源の利用の促進及びエネルギーの供給に係る自律性の向上に資することができるよう、必要な措置を講ずる責務を有する」と規定され、原発活用によって電力安定供給や脱炭素社会を実現することが「国の責務」と明記された。今日「国の責務」と言うのであれば、既存の原子力発電所の徹底した規制と安全性確保、再生可能エネルギーを主体としたエネルギー政策の転換こそが、「国の責務」ではないだろうか。
この他にも、高レベル放射性廃棄物の最終処分方法が未確立の上、その保管・貯蔵量が限界に達しようとする中、今後の方向性が示されていないことや、福島第一原発の廃炉への方向性も見えず、被災者・避難者への補償が不十分なままであることなどを指摘せざるを得ない。
我々は、政府に対して、福島第一原発事故によって得られた教訓に立ち返り、本改正法を廃止し、脱原子力発電、再生可能エネルギーへの転換を図ることを求めるものである。また、いのちと健康を守る医師・歯科医師として、広範な国民との協力・共同の力で、政府のエネルギー政策の転換をめざし運動していくことを表明する。
以上
- 2023.11.07 第52回定期総会・決議
政府が今国会に提出していた健康保険証廃止を含むマイナンバー法等改正法案は6月2日、参議院本会議において自民・公明・維新・国民の賛成多数で可決された。これによって、来年秋に現行の健康保険証を廃止し、本来任意取得であるマイナンバーカードと健康保険証を一体化した「マイナ保険証」を実質義務化することになった。皆保険制度を崩壊させ、多くの国民を医療から遠ざけるとともに、情報漏洩の不安を感じさせる愚策と言わざるを得ない。
当会の調査ではカードリーダーを導入している8割の会員のうち、6割でオンライン資格確認ができない等の「トラブルがあった」と回答をしている。現場では初診で「マイナ保険証」による資格確認ができなかった場合、やむを得ず窓口で10 割負担した事例や、手持ちがなく、受診を諦めた事例もみられた。来年秋以降、健康保険証が廃止となった場合には、その場で資格が確認できず、命にかかわる問題が多発する事態が予想される。現行の保険証を存続させることが必要である。
一方、新型コロナウイルス感染症発生から3年以上が経過し、5月8日から「5類感染症」に移行することになった。政府はこれで一区切りをつけた形であるが、新型コロナ感染症が撲滅されたわけではなく、予断を許さない状況である。当会はパンデミック発生時から現在まで歴月で会員医療機関の経営実態調査を行っているが、直近の調査結果をみても回答した4割の会員が未だに受診抑制による患者減が続き、コロナ前には回復していないと回答している。長く続くコロナ禍による診療の疲弊に加えて、円安や相次ぐ物価、人件費高騰で医療機関の経営は厳しく、閉院・廃業を決意せざるを得ない状況がみられる。それらを打開するためにも診療報酬の今期中の再改定に加え、次期改定も大幅な引き上げを強く要求する。
最後に、社会保障が抑制され続ける一方で、軍拡路線が展開されていることは看過し難い。私たちは命を守り平和を願う医師・歯科医師の団体として、軍拡路線に強く反対する。また、国連「核兵器禁止条約」の発効に賛同し、今後も核兵器廃絶に向けた努力を続けていく所存である。
私たちは第52 回定期総会にあたり、今年度も国民皆保険を守り、すべての国民が尊厳を保って幸せに暮らせる社会の実現を目指し、次の事項に全力で取り組むことを決議する。
記
一、 診療報酬の今期中の再改定に加えて、2024 年4月改定の大幅引き上げと不合理是正を行うこと
一、 健康保険証の廃止を撤回するとともに、オンライン資格確認、レセプトオンライン請求の実質義務化を撤回すること
一、 保険でより良い歯科医療を実現するため、歯科医療費の総枠拡大を行い、歯科技工士や歯科衛生士等の歯科医療従事者の待遇改善を図ること
一、 安全に医療を提供するため、医療従事者の労働環境の改善を図ること
一、 国庫負担を増やし、過重な保険料負担や窓口一部負担を大幅に軽減し、新たな患者負担増を行わないこと
一、 審査、指導、監査については保険医の人権と裁量権を尊重すること
一、 感染症、災害、救急、周産期、小児、難病、障害者等の行政的医療が維持できなくなる組織改革はやめ、公立、公的病院の拡充等の支援を行うこと
一、 地域環境の変化による新興、再興感染症に対する体制を充実すること
一、 世界標準のワクチンを希望するすべての人たちに、無料で安心して接種できる体制を構築すること
一、 消費税損税となっている保険医療にゼロ税率を適用すること
一、原発ゼロをめざし、再生可能エネルギー中心の政策に転換すること
一、唯一の戦争被爆国として核兵器禁止条約を批准すること
一、憲法9 条、25 条などを有する日本国憲法を遵守すること
- 2023.04.26 「保険証廃止法案」の衆議院特別委員会採決にあたり、協会は会長声明を発表しました。
2023年4月25日
【抗議声明】
千葉県保険医協会
会 長 岡野 久
「保険証廃止法案」衆議院特別委員会採決に抗議します
現行の健康保険証を存続せよ
4月25日、衆議院の「地域活性化・こども政策・デジタル社会形成に関する特別委員会」において健康保険証を廃止し、マイナンバーカードと一本化することを含む「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律等の一部を改正する法律案(マイナンバー法等一部「改正」法案)」が採決された。法案審議は4月18 日に始まったばかりで、実質的な審議時間は参考人質疑も含めてわずか13時間である。短時間の審議の中でも、健康保険証廃止によって無保険者が発生してしまうこと、医療や介護の現場での混乱など、多くの問題点が指摘され、健康保険証の廃止に道理は無いことが明らかとなっている。しかし、政府は国民の不安な声、医療や介護現場からの懸念に正面から答えていない。
「保険証廃止」は皆保険制度を揺るがす甚大な事態に
我が国は国民皆保険制度により、1枚の保険証さえあれば、いつでも、誰でも、どこでも、安心して必要な医療を受けることができる。保険者はすべての国民(被保険者)に健康保険証を発行し、交付することは公的医療保険制度の大前提となっており、法令上も保険者には被保険者証の発行が義務付けられている。しかし、政府は来年秋からは健康保険証を廃止し、保険者の「発行、交付」義務を国民による「申請主義」へ転換させる制度改悪となっている。これは国民皆保険制度の根幹を大きく揺るがすものであり、国民の多くが安心して必要な医療が受けられない甚大な不利益を被る事態に繋がることが必至である。
保団連・協会で取り組んでいる「保険証廃止反対」の緊急オンライン署名は短期間で8万筆にのぼり、「マイナンバーカードは強制でなく任意なのだから従来の紙の保険証を利用するかも、国民が選択できなければ道理に合わない」、「保険証の廃止は今まで築いてきた国民皆保険制度を崩すもの。強制してやめさせるのはおかしい」など、反対、不安、懸念の声は広がるばかりである。
高齢者施設の94%が「利用者・入所者のマイナンバーカードを管理できない」
さらに、健康保険証の廃止ありきで、代理交付・申請補助や第三者によるカード管理を進めるとされているが、協力を求められる医療・介護現場には負担と責任が課せられ、人手不足にも拍車がかかる。当会が加盟する保団連で行った高齢者施設への影響調査では、特養など高齢者施設の94%が「利用者・入所者のマイナンバーカードを管理できない」と回答した。このまま健康保険証の廃止が強行されれば、利用者・入所者は医療へのアクセスに困難を抱えることになり現場は大混乱に陥ってしまう。
健康保険証廃止の矛盾は明らか、保険証は全員に交付を
医療や介護現場の混乱を防ぎ、安心して医療が受けられる皆保険制度を守るために、政府はこれまで同様に健康保険証は全員に交付した上で、マイナンバーカード利用を「任意」とすればよいだけのことである。改めて現行の健康保険証の存続を求めるとともに、マイナンバー法等一部「改正」法案は徹底審議の上、廃案とすることを強く求める。 以上
- 2023.03.22 医療DXの推進に関する工程表(骨子案)に関する御意見の募集について 提出先:内閣官房医療DX推進チーム
協会は下記のように「医療DXの推進に関する工程表」についてのパブリックコメントを提出しました。会員の先生方でも自由に同コメントの提出が可能ですので、ご検討いただきますようお願いいたします。募集要項等は下記からご確認ください。締め切りは4月6日(木)になります。
医療DXの推進に関する工程表(骨子案)に関する御意見の募集について|e-Govパブリック・コメント
2023.03.22
医療DXの推進に関する工程表(骨子案)に関する御意見の募集について
提出先:内閣官房医療DX推進チーム
千葉県保険医協会
会 長 岡野 久
<基本的な考え方について>
- 国民の更なる健康増進について保険医療データをPHRとしてより良い医療に生かす点については大いに賛同するところもあるが、もし国民一人一人の個人データが営利目的の保険会社等に使われ患者、国民に一方的な不利益をもたらす事があってはならないと考える。個人情報が漏洩せず、当該個人のコントロール権が守られている必要がある。
- 医療情報という非常に繊細な情報の共有にはセキュリティを確保できることが求められる。国が充分な情報提供や費用支援を行う必要がある。経済的にも人的にも余裕のない医療機関では平時だけでなく、災害時等緊急時には対応出来ないためデジタルによって、すぐに医療連携や情報共有ができるわけではないことを十分理解して国が先導してほしい。
- 現行のオンライン資格確認システムやそれ以前のコード化問題で医療現場の業務は非常に煩雑になってきており、到底効率化とは言えない真逆の状況となっている。医療現場がどうしたら円滑に業務が遂行できるかを熟知せずにデジタル化のみ進めても全く意味が無い。
- 複雑なITシステムに対応するにはITスキルに強い人材を余分に雇う必要があるので費用増になる。その視点で考えると運営コスト軽減に結びつくと結論付けるのには無理がある。
- 医療情報の二次利用の環境整備について営利団体であるヘルスケア産業が医療情報を提供するには、国民の合意が必要ではないか。例えば個人情報を生命保険会社等に知られて、本人が不利益を被る可能性がある。個人情報保護法にも抵触する問題である。
<具体的な施策及び到達点について>
(1)マイナンバーカードと健康保険証の一体化の加速について、任意取得であるマイナンバーカードに健康保険証を一体化することについては、国民的理解と合意が得られていない。オンライン資格確認体制を義務化することでマイナンバーカード取得も事実上「義務化」となる点には矛盾が生じている。この点について国会審議や国民に説明もなく、義務化を強要するのは問題である。紙ベースの健康保険証廃止も国民に説明し議論を経る必要がある。現行の健康保険証で問題なく進められてきた医療界にとって紙の保険証が無くなれば災害時、停電時等にどう資格確認を行うのか。現にマイナンバーカードによるオンライン資格確認システムを導入している医療機関の4割で資格確認が出来ないトラブルが発生している。その点でも現行の健康保険証による医療受診に代えて、マイナンバーカードによる受診へのシステム変更に踏み切ることは拙速である。マイナンバーカード取得困難者等社会的弱者に対する視点が欠落している。これらの人々を切り捨てる差別社会になりかねない。システム変更が強行された場合医療崩壊から医療壊滅にまで進んでしまうのではないか。このことは患者国民の命を危険に晒す行為ではないのか。
(2)全国医療情報プラットフォームの構築
①共有可能な医療情報の範囲の拡大、電子カルテ情報の標準化等医療情報の共有がより良い医療遂行にとって必要になる事は充分理解できるが、医療現場の負担にならない方法で遂行してほしい。また、医療情報は非常に繊細な情報であり、誰でもいつでも見て良いというものではない。必要性の高いと思われる人が必要な時にだけ見られるという規制がなければいけない。情報共有する以前に、個人情報の在り方が厳格に示され、現場の状況に合わせ責任もった体制づくりをすすめるべきである。
②自治体、介護業者等とも必要な情報を安全に共有出来る仕組みの構築および個人情報を如何に守り共有して使えるかが重要である。前述した様に必要な情報を提供し人的にも費用的にもセキュリティ等を確保する為の支援をすべきである。
(3)診療報酬改定DX
診療報酬改定点数表におけるルールの簡素化・明確化とあるがこれはデジタル化と関係はない。デジタル化に関わらず達成しているべきことであり、マイナンバーカードの有無により患者窓口負担に差が出るのは差別であり、診療報酬で格差をつける点数は撤廃すべきである。ただし、オンライン資格確認システムの導入により医療機関の経費が増えることに対し、診療報酬ではない補助金等による財政支援を行うべきである。
(4)医療DXの実施主体
国が医療DXありきで医療現場や国民の同意なく強引に進めていくべきではない。より良い医療を提供しやすくなる為にデジタル化する発想でなければならない。患者・国民に利益をもたらす「デジタル化」でなければならないと考えている。
以上
- 2022.11.15 2023年4月実施オンライン資格確認システム 導入の原則義務化「撤回」とシステム運用の 検証結果公表及び公聴会開催を要求する
当会は千葉県内開業医保険医医科・歯科会員4230 名で組織している団体で、9 月下旬に一斉に会員を対象にFAX で「オンライン資格確認システムの導入状況」と、既に運用している会員には「システムの現状」を伺うアンケート調査を実施し、471 件回答があった。
オンライン資格確認システム導入の義務化を「撤回」し、療養担当規則改正を調査結果では、マイナンバーカードによるオンライン資格確認システムは58.8 % の会員割が導入していないと回答。実施している医療機関は僅か12.3 % であった。厚労省が掲げた9 月末に全体の5 割の導入を目指す目標にも及んでおらず、2023 年3 月末には9 割超の目標達成は不可能で、来年4 月の「義務化」は撤回し、療養担当規則を改正すべきである。
また、アンケートで導入への懸念を聞いたところ「レセコンや電子力ルテ等の改修で多額の費用がかかる」、「導入補助金が少ない」が62.2 %、「保険証の廃止」59.4 %、「情報漏洩や拡大、セキュリティ対策が不安」が58.0 %、と続き、回答した医療機関の多くは電子媒体 ( 光ディスク) で請求するなど、オンライン化には建物の改修が必要となる事例が多くみられた。一方、オンライン化の体制確保が可能な医療機関であっても、ランサムウェアによる情報漏洩を懸念し、セキュリティ対策が不十分であるため、導入を見合せるところもあった。
システム運用のトラブル検証結果の公表と公聴会等の開催を既に運用を開始している12.3 % の会員に「トラブルの有無」を聞いたところ、約半数 (47.6 % ) の医療機関で機器のトラブルが発生し、医療現場では患者さんの診察に支障を来していると回答。今後、義務化した場合にはトラブルは更に増えることになり、資格確認ができない場合には、患者さんから10 割自己負担を求める事態にもなり、受療権の侵害にもあたる看過できない事態が予測される。まずは、政府は実施している医療機関からエラーやトラブルなど、多くの問題点を集約、検証、解決を図る等、体制整備が前提であると考える。
当会は① 12 月開催の中医協ではシステム運用の検証結果を公表すること、②公聴会の開催やパプリックコメント募集など行うこと、③ 2023 年4 月からのオンライン資格確認システム導入「義務化」を撤回し、療養担当規則を改正すること。④保険証廃止の方針の「撤回」を強く要望する。
- 2022.09.06 オンライン資格確認システムの強行な義務化導入に抗議し、 保険証の原則廃止方針の撤回を求める
厚生労働大臣 加藤 勝信 殿
8月10日の中医協総会は患者によるマイナンバーカードの健康保険証利用(以下、マイナ保険証)促進のため、療養担当規則を改正し、2023年4月からオンライン資格確認の「原則義務化」を明記し、これに伴う診療報酬上の加算(医療情報・システム基盤整備体制充実加算)を答申。9月5日に療養担当規則の改定を告示した。
今回の10月からの診療報酬の見直しでは、通常の保険証の場合は初診時に4点加算、マイナ保険証の場合は2点加算となった。持参する保険証によって診療報酬の格差を設けることは国民の受療権を侵害するものである。また今年4月に実施された加算を期中で改定することで医療現場には混乱が生じ、患者の意思はでなく受診する医療機関の体制によって自己負担が増えることも断じて容認できない。ましてやオンライン資格確認の導入に多額の費用、維持費がかかるが、小手先の加算で到底対応できるものではない。
当会には、既にシステムを導入した会員から「資格確認ができない」「最新の情報になっていない」等の相談が相次いでおり、厚労省は過誤請求や手入力による手間等の事務コストの削減を謳うが過誤請求は全く解消されず、むしろ事務負担が増えている有様である。
骨太の方針2022ではオンライン資格確認の原則義務化と保険証の原則廃止を目指す方針が示された。現行の保険証による資格確認は国民に定着し、患者・医療機関側も何ら不便を感じていない。マイナンバーカードの取得も「任意」であり、国民に浸透しているとは言えない。マイナ保険証による受診を患者に強要することは、マイナンバーカードの取得義務化にも繋がり、先の「任意」と矛盾する。患者や医療現場の声を無視し、重大な事案を閣議決定に基づき推進することは手続き上でも違法であり、断固許されない暴挙である。
海外では個人番号制の国もあるが、情報漏洩や紛失などのリスク、セキュリティ体制には厳しい監視体制や罰則もあり、個人情報へのコントロール権が担保されている。しかし、日本ではこのような前提がないまま義務化を強行しようとしている。現在のオンライン資格確認導入の進捗は診療所で2割、2023年3月時点で6割前後とされ、同年4月の義務化には間に合わない。また、オンライン請求回線の導入とあるが、これは実質的なレセプトオンライン請求の義務化である。国は導入効果として資格喪失後の返戻減少を挙げるが、それは全体の0.27%に過ぎず、診療所は事務負担の強要だけでなく、導入や維持等に多額な費用負担が発生し、メリットは少ない。
様々な問題があることが明らかになる中で、厚労省は導入していない医療機関に対し、基金等からの架電、IDやパスワードの簡易書留による通知を行うなど多額の税金をかけてシステム導入を強引に推し進めようとしている。また、マイナンバーカード取得推進のためにマイナポイント付与に1.8兆円もの費用を投じている。コロナ禍による患者減で経営難に喘ぐ医療機関でオンライン資格確認義務化に対応できない事例が発生し、廃業せざるを得ない状況も予測される。当会は今回の拙速かつ強行なオンライン資格確認導入の義務化と保険証の原則廃止方針の撤回を強く要求する。
- 2022.06.19 第51回千葉県保険医協会定期総会決議
わが国が新型コロナウイルス感染症のパンデミックに見舞われ、2 年半が経とうとしている。昨年の今頃は感染防止に欠かせないマスクや防護具が枯渇し、多くの開業医は手作りのビニールガウン等で自身を覆い、必死に診察する姿があった。今年に入り、世界的にはワクチン接種が加速度的に進み、新たな局面を迎える中で、わが国のワクチン供給は周回遅れとなり、すべての国民へのワクチン接種が滞り、未だに生活に不安を抱き不自由な生活を強いられながら、新型コロナウイルスと対峙している。
現在、第7波感染拡大で収束の兆しが見えない中でも、岸田政権は「新自由主義」路線を継続し、経済最優先、医療、社会保障を蔑ろにする政策を踏襲している。「75 歳以上の窓口負担2割化」についても本年10 月実施を強行する予定である。多くの高齢者が感染を恐れ、受診控えや定期的な健診の遅れも増える中で、医療費の負担増により更に受診を手控えることは、一層の健康悪化につながるものである。また地域医療を担う開業医の経営もコロナによる受診抑制により逼迫し、回復の見通しが立たず閉院を決断せざるを得ない状況も散見され、医療機関への経済的な支援は喫緊の課題である。
更に私たちは命を守り平和を願う医師・歯科医師の団体として、国連「核兵器禁止条約」の発効に賛同し、今後も核兵器廃絶に向けて努力を続けていく所存である。
我々は第51 回定期総会にあたり、今年度も国民皆保険を守り、すべての国民が尊厳を保って幸せに暮らせる社会の実現を目指し、次の事項に全力で取り組むことを決議する。
記
一、 10%以上の診療報酬(特に基本診療料)引き上げと不合理是正を行い、同時に介護報酬の引き上げも行うこと
一、 保険でより良い歯科医療を実現するため、歯科医療費の総枠拡大を行い、歯科技工士や歯科衛生士等の歯科医療従事者の待遇改善を図ること
一、 金銀パラジウムの逆ザヤを生まない制度にすること。
一、 安全に医療を提供するため、医療従事者の労働環境の改善を図ること
一、 国庫負担を増やし、過重な保険料負担や窓口一部負担を大幅に軽減し、新たな患者負担増を行わないこと
一、 審査、指導、監査については保険医の人権と裁量権を尊重すること
一、 感染症、災害、救急、周産期、小児、難病、障害者等の行政的医療を維持できなくなる組織改革はやめ、公立、公的病院の拡充等の支援を行うこと
一、 地域環境の変化による新興、再興感染症に対する体制を充実すること
一、 世界標準のワクチンを希望するすべての人たちに、無料で安心して接種できる体制(日本版CDC、ACIP)を構築すること
一、 消費税損税となっている保険医療にゼロ税率を適用すること
一、原発ゼロをめざし、再生可能エネルギー中心の政策に転換すること
一、唯一の戦争被爆国として核兵器禁止条約を批准すること
一、憲法9 条、25 条などを有する日本国憲法を遵守すること
2022 年6 月19 日
千葉県保険医協会第51 回定期総会
- 2022.06.08 マイナンバーカードの保険証利用等に係る システム導入の義務化に強く反対する
内閣総理大臣 岸田 文雄 殿
厚生労働大臣 後藤 茂之 殿
総務大臣 金子 恭之 殿
デジタル大臣 牧島 かれん 殿厚生労働省は5月25日に開催された社会保障審議会医療保険部会において、2023年4月から保険医療機関でオンライン資格確認のシステム導入義務化と、2024年度中を目途に保険者による保険証発行の選択制の導入、保険証の原則廃止を目指す方向で検討を開始した。「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太の方針)においても同様の方針が示され、マイナンバーカードの保険証利用のペースを上げるため国は強制的な手法を取ろうとしている。
国民皆保険の日本では、医療へのアクセスと健康保険へのアクセスは実質的に同一である。保険証が原則廃止ともなれば、マイナンバーカードを持たない者は、健康保険による診療が受けられなくなるので、保険診療を受けたい場合マイナンバーカードを取得せざるを得ない。これはマイナンバーカード取得の実質義務化である。マイナンバーカード取得は法律上任意とされているので、明らかに法律に抵触するのみならず、マイナンバーカード取得を医療へのアクセス条件にすることは、憲法25条で規定された生存権を脅かすもので容認できない。またマイナンバーカードの保険証利用により、マイナポータルに集積された診療情報の閲覧が可能になる。しかし近年、ランサムウエア感染をはじめとするサイバー攻撃のリスクは格段に上がっている。患者の医療情報の漏洩リスクなどプライバシー侵害の問題が何ら解決されていない。
オンライン資格確認は導入コストのみならず、一定のランニングコストを医療機関が負担する。これらの財源を手当てせずに、国が一方的な「義務化」を強要することは、過去にレセプトのオンライン請求を「義務化」しようとして、医療現場に大混乱を招き失敗した歴史から何も学んでいないと指摘せざるを得ない。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対応で疲弊した医療現場に、オンライン資格確認システム導入の義務化を押し付けるのは現場無視も甚だしいと言える。
患者・国民の命と健康を守る医師・歯科医師の団体として、政府・厚労省に対して、医療機関におけるマイナ受付等に係るシステム導入の義務化、保険者における保険証発行の選択制導入や保険証の原則廃止などについて中止・撤回することを強く求めるものである。
- 2021.11.13 HPVワクチン積極的勧奨「再開」の決定を歓迎する ~子宮頸がんからすべての女性の命と健康をまもるために~
千葉県保険医協会はこれまで「ワクチンで防げる病気からすべての人を守る」ために、世界標準のワクチンを費用負担なく、無料で安心接種できる環境を求めて、患者会の皆さんと一緒に定期接種化を求める活動を推進してきました。
そうした中、昨日11月12日開催の厚生科学審議会(予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会)において、ついに「HPVワクチンの積極的勧奨再開」が決まりました。当会は2013年6月以降、8年以上にわたり差し控えられていたワクチン接種の積極的勧奨がようやく再開されることを歓迎します。これまで実現に向けて取り組まれた関係各位には心より感謝と敬意を表します。
今後は国、自治体に対し以下の点を強く求めます。
①8年間でHPVワクチンの接種機会を逃した対象者へのキャッチアップ接種(経過措置)の実施
②カバー率の高い9価ワクチンを適正な価格とし、速やかに定期接種へ切り替えること
③男子への接種に早急に取り組むこと。
④ワクチンの安全性と有効性について科学的な根拠に基づいて情報の提供を行うこと。
⑤医療機関と連携して接種後の健康被害を呈した方への治療や相談、支援体制を強化し、社会的な補償の充実も求められる課題となっています。
- 2021.09.29 感染症対策実施加算の継続等を強く求める
政府は、感染症対策に関する外来・入院時の特例加算を9月末で打ち切り、10月以降は補助金で対応する方針を示した。乳幼児への外来特例は点数を引き下げ半年延長する。多くの医療関係団体が加算継続を要望する中、特例措置を終了させたことに抗議するとともに、下記の通り診療報酬加算の継続を強く求める。新型コロナウイルスは、無症状でも感染力を有し、接触・飛沫対策に加え、エアロゾルへの対応が求められる。こうした特性を踏まえ、今年4月より感染拡大防止を図りつつ日常診療を継続するすべての医療機関等を対象に感染症対策実施加算が措置され、不十分ながらも感染対策への人的・物的経費を補う役割を果たしてきた。地域の医療機関は、変異を繰り返し、感染力を増す新型コロナウイルスと対峙し、心身ともに疲弊しながらクラスター発生等を防止してきた。新規感染者数は減少したものの、秋冬の第6波に向け、感染拡大防止対策の継続は必須であり、医療従事者の努力に報いるためにも加算継続は不可欠である。政府は、年末までの感染対策として、補助金(無床診療所8万円、病院・有床診療所10万円)を追加給付するとした。しかし、当面する感染対策の経費として不十分であり、これまで措置された補助金の執行も大幅に遅れている。迅速・簡便な診療報酬による対応の継続を強く求める。記一、外来等感染症対策実施加算、入院感染症対策実施加算を10月以降もそのまま継続すること。―、乳幼児感染予防策加算は引き下げず、継続すること。
さらに、歯科においては医科と同点数へ引き上げること。
- 2021.08.19 【会長談話】「黒い雨訴訟」上告断念を歓迎し、 被爆者全員の早急な救済を求める。
菅義偉首相は7月27日、広島県のいわゆる「黒い雨」訴訟の原告に対し、広島高裁の判決に上告しない旨の談話を発表し、上告期限の7月29日に原告勝訴の判決が確定した。
黒い雨訴訟は原爆投下後に放射性物質を含んだ「黒い雨」を浴びて、健康被害が生じた広島県広島市や安芸太田市の住民84人が原告となり、「被爆者健康手帳の交付申請却下処分」の取り消しを求めた訴訟で、一審に続き、原告全員を被爆者と認め、被爆者健康手帳交付を命じる判決が7月14日に出ていた。
この判決に対し、広島県と広島市は上告しない意向を示したが、国は「科学的な知見に基づいていない」、「被爆者援護法の枠組みを大きく壊すもので、看過できない」などとし、被告が上告しないと表明しているにも関わらず、補助的な立場で裁判に参加した国が上告を求めるという異例な状態であった。
国が上告断念を迫られたのは高裁判決後、全国で判決支持の声が高まり、「黒い雨」による被爆者の長年に渡る願いと苦しみに国民が心を寄せたことである。
一方で、談話は「今回の判決には過去の裁判例と整合しない点があるなど、重大な法律上の問題点があり、政府として本来は受け入れがたい」とし、判決で示された汚染した飲食物の摂取による「内部被曝」による健康被害も広く認めるべき、との指摘には「容認できるものではない」とした。
菅首相は会見で「黒い雨」訴訟の原告と同様の被害者に対しても「訴訟への参加・不参加にかかわらず、認定し救済できるよう早急に検討する」と述べた。千葉県保険医協会は国の責任において救済するという姿勢を評価するとともに、今回、否定された「黒い雨」の援護対象区域の抜本的見直しや被爆者認定の枠組みを抜本的に改め、「黒い雨」により被爆したすべての人々の救済が早急に実現することを願うものである。