千葉県保険医協会

千葉県保険医新聞

2025年4月15日号(815号)医療法等改正案の問題点/マイナ保険証、9割がトラブル経験記事一覧に戻る

医療DX推進で「仮名化」可能に医療法等改正案の問題点

2月14日、石破内閣は「医療法等の一部を改正する法律案」を閣議決定し、同日開会中の国会(第217回国会)へ提出。衆議院で審議中である。
今回の「医療法等改正案」について、厚労省は「高齢化に伴う医療ニーズの変化や人口減少を見据え、地域で良質かつ適切な医療を効率よく提供する体制を構築するため、地域医療構想の見直しや医師偏在是正に向けた総合的な対策の実施。また、これらの基盤となる医療DXの推進のために必要な措置を講ずる」と改正の主旨を説明。その主な概要として、(1)地域医療構想の見直し等、(2)医師偏在是正に向けた総合的対策、(3)医療DXの推進の3つの柱を挙げている。
3月19日に行われた厚労省予防接種基本部会(部会長:脇田隆字国立感染症研究所長)では、事務局からの説明で、(3)医療DXの推進のうち、②「公的DB(データベース)における仮名化情報の利用・提供」について、現在は匿名化情報の利用・提供を進めているが、匿名化情報では精緻な分析や長期の追跡ができない等、一定の限界があるとし、今後は公的DBの「仮名化情報」の利用・提供を可能とし、他の仮名化情報や次世代医療基盤法の仮名加工情報との連結解析を可能とする方針を示していた。 「(3)医療DXの推進の②」は、医療情報の二次利用を推進するというものであり、機微情報である患者の医療情報を活用することは、医療機関にとって看過できない内容が法律案に盛り込まれている。

オンライン診療を定義、地域外来医療で開業調整へ

「医療法等改正案」の他の2つの柱に目を移す。
(1)地域医療構想の見直し等は、病床数の調整の他、入院・外来・在宅医療・介護との連携を2040年頃を見据え、医療提供体制を確保するとする。「オンライン診療」を医療法で定め、「オンライン受診施設」として、公民館、郵便局、駅ナカブース、職場や介護事業所等を想定し、拡大するとしている。
(2)医師偏在是正に向けた総合的対策は、医師の少数区域と過多区域に分けて対応。「外来医師過多区域」の無床診療所への対応を強化(新規開設の事前届出制、要請勧告公表、保険医療機関の指定期間の短縮等)する。具体的には、保健医療機関の指定期間を6年から3年等への短縮する案が出されており、運用によっては開業規制となりうる法律案となってい流。

医療法等の一部改正の法律案のうち、医療DXの推進関係

【図1】公的データベースにおける仮名化情報の利用・提供

【改正の内容】
○公的DBの仮名化情報の利用・提供を可能とし、他の仮名化情報や次世代医療基盤法の仮名加工医療情報との連結解析を可能とする。
○その際、個人情報の保護を適切に図るため、以下のような管理・運用を行うこととする。 ・仮名化情報の利用は「相当の公益性がある場合」に認めることとし、利用目的や内容に応じて必要性やリスクを適切に審査する。
・DBは、個人情報保護法上、個人情報の保有主体に求められるものと同等の安全管理措置や不適正利用の禁止等の措置を講ずる。
・仮名化情報の利用に当たっては、クラウドの情報連携基盤上で解析等を行い、データ自体を相手に提供しないことを基本にする。
・これまでの匿名化情報と同様に、照合禁止やデータ消去、安全管理措置、不正利用の際の罰則を求め、匿名化情報よりも厳格な管理を担保するため、厚労大臣等から利用者に対して利用の目的・方法の制限の要求等の規定を設ける。

【図2】電子カルテ情報共有サービス

制度の概要
○全国の医療機関等において、電子カルテ情報を共有・閲覧することができるようにする。
・医療機関が3文書(健診結果報告書、診療情報提供書、退院時サマリー)と6情報(傷病名や検査等)を電子的に共有できるようにする。
・患者が自身のマイナポータルで健診結果報告書や6情報を閲覧できるようにする。医療保険者にも健診結果報告書を電子的共有する。

▲出所:図1、図2は、厚労省社会保障審議会医療部会(2/26)の資料より抜粋。

【マイナ保険証】9割がトラブル経験・12月2日以降、初の全国調査

保団連は、昨年12月2日に健康保険証の新規発行が停止されて以降、「マイナ保険証」による資格確認によって起きたトラブルについて初の全国調査を行い、その結果を発表した。調査は、2月から3月14日にかけて、約4万7千の医療機関に調査票を送付。回答した8,330件を集計した。
3月27日には、厚生労働省で記者会見を開き、宇佐美宏、井上美佐両副会長、杉山正隆、山﨑利彦両理事から、医療機関の現状報告が行われた。
具体的な項目として、回答した会員医療機関の9割でトラブルがあったと回答。内訳の複数回答で氏名や住所の漢字が●(クロマル)で表示されたケースが5350件(64.2%)で最多だった。また、転居や引っ越しなどで、資格変更時に情報が更新されず「無効」と表示されるケースも3156件(37.9%)あった。マイナンバーカードのICに搭載されている電子証明書の有効期限切れは2552件(30.6%)あった。

カード更新漏れで、マイナ保険証に影響

総務省の想定によると、4月から1年間(2025年度)に、電子証明書の更新が必要となるマイナンバーカードは約1580万件にのぼることについて、井上副会長は「今後、患者が医療機関窓口で、有効期限切れを知らずに受診し、トラブルになる恐れがある」と指摘した。
厚生労働省は、マイナ保険証での資格確認ができなかった場合、医療機関に設置してある「被保険者資格申立書」に必要事項を記入して提出すれば「自己負担10割はない」と広報しているが、これに対して、山﨑理事は「初診の患者の場合は全額請求せざるを得ない。トラブル時のバックアップとして保険証は存続させるべきだ」と話した。

Topicsトピックス

歯周病と糖尿病
保険で良い歯科医療を運動
ワクチンで防げる病気はワクチンで防ごう
風しんをなくす会について
待合室キャンペーン
医科・歯科勤務医110番
採用情報

非会員・一般の方へ

Copyright(c)2025 千葉県保険医協会 All Rights Reserved.