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千葉県保険医新聞

2025年6月15日号(818号)社会保障抑制方針は廃止を/骨粗鬆症診療のポイントとは記事一覧に戻る

【抗議談話】「骨太の方針2025」原案
社会保障抑制方針は廃止を


政府は6月6日、2025年の「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太の方針)の原案(以下、原案)を公表した。協会・保団連は、医療・社会保障抑制に固執する原案に抗議し、修正を求める抗議談話を発出した。


直ちに診療報酬期中改定・大幅引き上げを

原案では、医療界の困難の元凶となっている社会保障関係費を高齢化に相当する伸びに収める方針に関し、医療費の自然増について「高齢化や高度化等による増加分」だけでなく、「経済・物価動向等を踏まえた対応による増加分」も加味するとしているが、「これまでの歳出改革努力を継続する」との文言は残されおり、「27年度までの間、骨太方針2024で示された歳出改革努力を継続する」とし、自然増を高齢化に相当する伸びに収める方針の継続を示唆している。

政府は医療経営の原資である診療報酬を長年にわたって著しく抑制してきた結果、医療機関の閉院、廃業が相次ぎ、地域の医療提供体制の確保が厳しい状況となっている。

帝国データバンクが24年1月に調査した資料で、医療機関(病院、診療所)の倒産は64件、休廃業・解散は722件にのぼる。「皆保険あって医療機関なし」の状況が現実味を帯び始めている。
診療報酬の期中改定や補助金を駆使した医療機関への即時の支援をすべきである。
全ての医療機関において賃上げがしやすく、経営安定に最も寄与する基本診療料を中心に診療報酬の抜本的な引き上げを行う方針を示すべきである。

市販薬化の推進、保険外しは削除すべき

医薬品・検査薬の「更なるスイッチOTC化(市販薬化)」等についてはセルフメディケーションを推進しつつ、「薬剤自己負担の見直し」を検討するとし、保険給付見直しについて早期に実現できるものは26年度から実行する方針とも報道されている。市販薬は処方薬に比べて価格が各段に高く、難病患者などは命に直接関わる事態ともなりかねず、市販化した医薬品が保険給付の除外・制限となれば患者負担は大幅に増えることになり、記載を削除すべきだ。

さらに「医療DX」に関わって、▽12月以降は「マイナ保険証を基本とする仕組み」に移行する、▽全国医療情報プラットフォームを構築し、電子カルテ情報共有サービスの普及や電子処方箋の利用拡大、PHR情報の利用拡大、▽標準型電子カルテの本格運用の具体的内容を25年度中に示すことも含め必要な支援策の具体化を検討し、その普及を促進するとしている。

そもそも、マイナンバーカード取得は任意である以上、マイナ保険証の利用の押し付けは問題である。オンライン資格確認においてマイナ保険証の利用件数は3割未満にすぎない。患者の受療権の保障、医療現場の混乱の回避に向けて、年末以降「マイナ保険証を基本とする仕組み」に移行する方針は中止が現実的であり、賢明である。

電子カルテ等、DXの強要は医療崩壊を招く

紙カルテの診療所に電子カルテの実装を求めることは、地域に長年貢献し、地域を熟知したベテラン・高齢の医師・歯科医師が地域医療から退出していくことにつながりかねない。実質義務化ともなりかねない「5年以内の実質的な実現を目指す」は削除すべきである。

※抗議談話の全文は、協会ホームページに掲載。

 


【医科学術研究会】骨粗鬆症診療のポイントとは
早期治療開始が肝要

骨粗鬆症診療のポイントについて説明する千葉氏=5月10日・協会会議室

協会研究部医科分科会は5月10日、「内科開業医が知っておきたい骨粗しょう症診療のポイント」をテーマに医学学術研究会を開催し、会場・Web併せて41人が参加した。講師は、東京都健康長寿医療センター臨床検査科部長の千葉優子氏がつとめた。

以下、細山公子担当副会長がまとめた要約である。

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内科の外来で診ている70歳を超えた患者さんの骨密度を調べてみると、骨粗しょう症のレベルになっている人が結構多い。それを全部整形外科に紹介するのがいいのだろうか?内科医は骨粗しょう症とどう向き合えばいいのだろう?そんな思いで、健康長寿医療センターの内科医である千葉先生にお話を伺いたいと思った。

そして改めて認識したこと、高齢者の介護が必要となる原因の1位は認知症、2位は脳血管障害、3位が骨折転倒となっていて、骨粗鬆症は、骨折リスクを増大させ、骨折によりQOL・ADLが低下し、死亡率を高める。日本女性の骨粗しょう症有病率は70歳代で約3人に1人、しかし骨粗しょう症患者数の約8割は治療を受けていないという。内科で最も多い疾患である高血圧の患者さんの治療をする目的は、血圧を下げることで脳血管障害の発症を予防し生活の質を保つことといえるが、高齢者を診ている内科医にとって骨を健康に保つことは、健康寿命を延ばすことにも密接につながるわけで、骨粗しょう症の患者さんをきちんと指導し骨折を防ぐことは内科医にとって大切な課題と言える。講師の千葉先生の話を伺って、そう強く感じた。

骨粗しょう症の治療の最大の目的は骨折の予防。他の慢性疾患と同様に、食事、運動、そして薬物療法がある。食事では、カルシウムとビタミンDが大切。運動はバランス運動と柔軟性運動、薬はいろいろあるがビスフォスフォネートが中心で、大切なのは、薬物治療は中断せず継続して行うことが望ましいとのことだった。

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