千葉県保険医協会

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2017年 学校歯科治療調査報告書(概要)アンケートの目的と方法 記事一覧に戻る

2022.08.10更新

1.目的と調査内容について

(1)目的
 2016年度に千葉県内の公立小・中学校、特別支援学校で学校歯科検診を受け、要受診の診断を受けた子どもの受診動向や、口腔の健康状態の実態、その家庭状況、学校での歯科保健指導の現状などを把握することを目的として実施した。

(2)調査内容(質問項目)
 ①2016年度(2017年度で回答している学校も含む)の学校歯科検診で「検診を受けた児童(生徒)数」と、その内で「要受診と診断された児童(生徒)数」、「要受診と診断され歯科医院を受診した児童(生徒)数」を教えてください。
 ②2015、2016年度に様々な事情で歯科治療を受けることができず、口腔の健康状態に問題があると見られる児童(生徒)に出会ったことがあるか。※会ったことが「ある」場合は、可能な範囲で事例をお書きください。
 ③その他、児童(生徒)の歯科検診や歯科受診に関して、何かお気づきのことがあればお書きください。

 

2.アンケートの対象、方法など

(1)対象
  千葉県内の公立小・中学校、特別支援学校1,220校
(公立小学校796校、公立中学校379校、特別支援学校45校)
(2)方法
調査票(A4版1枚)を郵便で送付し、郵送で返信

(3)実施時期
  2017年10月31日~2017年12月28日の約2ヶ月間

(4)送付数及び回答数・率(回答数は454校、回答率は37.2%)

 

対象数(送付数)

回答数

回答率

公立小学校

796

310

38.9%

公立中学校

379

122

32.2%

特別支援学校

45

22

48.9%

全体の合計

1,220

454

37.2%

 

<全体の状況>

児童・生徒数と要受診率、未受診率

 

検診受診数

要受診数

要受診率

受診数

未受診率

公立小学校

110,846

34,817

31.4%

18,633

46.5%

公立中学校

41,745

11,616

27.8%

3,475

70.1%

特別支援学校

2,786

847

30.4%

338

60.1%

総計

155,377

47,280

30.4%

22,446

52.5%

 


要受診でも未受診が52.5% -小学校で4割強、中学校で7割、特別支援学校で6割-

県内の学校で2016年度(2017年度で回答している学校も含む)の学校歯科検診で「検診を受けた児童(生徒)数」と、そのうち「要受診と診断された児童(生徒)数」、要受診のうち「歯科医院を受診した児童(生徒)数」を尋ねた。回答があったのは454校で、学校歯科検診を受けた児童(生徒)は155,377人。そのうち30.4%にあたる47,280人が「要受診」の診断を受けたが、歯科医療機関を受診したのは、47.5%の22,446人だった。よって、未受診率は半数以上の52.5%にのぼる。
未受診率を学校別でみると、小学校46.5%、中学校70.1%、障がい等がある子どもが通う特別支援学校では60.1%である。小学校よりも中学校の方が高いことがわかる。

 


「口腔の健康状態に問題があると見られる児童(生徒)に出会ったことがある」と回答54.4

20152016年度に様々な事情で歯科治療を受けることができず、口腔の健康状態に問題があると見られる児童(生徒)に出会ったことがあると回答した学校は、247校で全体の54.4%(公立小学校17054.8%、公立中学校6452.5%、特別支援学校1359.1%)だった。
アンケートでは、口腔の健康状態に問題があると見られる児童(生徒)に出会ったことがあると回答した場合、可能な範囲で事例を尋ねた。その結果、多くの事例が報告され、その内容は口腔内の状態・状況と家庭環境の2つに分けられる。

 

 ◎主な事例は以下参照(アンケートよりいくつか抜粋)

①口腔内の状態・状況

・一人でむし歯が多数ある(多くが78本以上と回答)、口の中がむし歯で真っ黒
・歯の根しか残っていないような未処置歯が複数ある(多くが23本以上と回答)
・歯垢、歯肉「2」の状態が何年も続いている
・痛みや腫れがあっても治療しない
・乳歯10本がむし歯で、歯石もつき、軽度の歯肉炎、要観察歯2本であり、何度も勧告するが毎年受診しない  

 

②家庭環境

・保護者の仕事が忙しく、時間的余裕がなく受診できない(ひとり親家庭、片親が病気など)
・保護者に経済的、時間的余裕がなく、歯科医院へ連れて行けない
・保護者が職を替え、その間保険証を使えず治療を受けることができなかった
・保護者が国民健康保険料の支払をしておらず、保険証がない生徒がいた
・外国籍の家庭、日本語の理解が乏しく、学校側との意思疎通が難しい
・食生活等の生活習慣や生活環境が整わず、口腔衛生状態が悪くなっている子どもがいた

 

③その他

・保護者の関心の薄さ、本人の意識の低さを感じる。痛くないから受診の必要を感じない等
・子どもが治療勧告等を親に見せていない
・通院よりも部活や塾の時間を優先させたい

 


歯科検診や歯科治療に対する要望 -養護教諭のコメントより-

その他、自由記載欄を設け、歯科検診や歯科受診に関して気づいた点を尋ねた。アンケートに回答した454校のうち285校(※62.8%-小学校18258.7%、中学校8872.1%、特別支援学校1568.2%-)が回答している。そこには、学校側から保護者へのアプローチをしているがなかなか受診率が上がらないなどの切実な悩みや歯科治療、歯科医師、行政(制度などを含む)に対する要望が養護教諭から寄せられている。

 

◎主なコメントは以下参照(アンケートよりいくつか抜粋)


①歯科治療に対する要望(啓発も含め)

・むし歯だけでなく、歯列、咬合、顎関節などで要受診となることが増えているが、その項目だとなかなか受診してもらえない
・乳歯の未処置歯は、治療率が低く、軽視されがち 

 

②歯科医師への要望

・校医さんが数名いると、う歯や要観察歯の基準が違うのか、診断が異なることがある
・勧告書を持って行っても「経過観察」や「問題なし」と言われて保護者からクレームが来る
・複数の歯科医が検診するので、見立てに差があり、要観察歯を多く診断する医者もいれば、歯列1,2の診断を多くする人もおり、学年により診断結果に差がでる
・クリニックだと治療が難しく、大きな病院を紹介されることが多いため、受診のハードルがとても高く、行きにくい現状があると思われる
・知的障害のある子ども達を積極的に受け入れてくださる歯科医院は増えてきているものの、未だ断られるケースがある 

 

③行政(制度などを含む)への要望

・誰もが気軽に歯科受診できるように経済的負担や痛みの軽減などをしていただきたい
・子ども助成券の使用で、200円/回となり、受診をすすめやすくなり、以前より受診しているように思う
・乳幼児検診や妊産婦時の指導はどのようになっているのかも知りたい
・部活動に参加している生徒は、練習を休んで受診するのを嫌がる傾向があり、痛みや不便を感じてからの受診になることがある
・運転ができないと公共交通機関を利用するしかなく、費用が捻出できない家庭は厳しい。徒歩だとしても遠ければ面倒になってしまうと思います…。
・フッ化物洗口を近隣の地区でやっている学校が増えてきて気になっている。
・むし歯のある就学援助の児童には市が発行する医療券で、無料で治療をすることができるが、受診をしない家庭も多々あり、学校ではなく、行政の指導が必要であると感じる 

 

④その他、養護教諭からのコメント

・ご両親の共働きが多く、歯科への受診が困難な傾向にある
・ひとり親家庭のお子さんは、未受診が多い。忙しくて歯科に行けないと言っている
・今までの経験から家庭環境が複雑(経済的に困難、一人親など)であると歯科保健に関心が低く、保護者に受診のおすすめをしても受診につながらないことが多いと感じる
・歯の健康状態が保護者の意識と比例しているように感じる。また経済状態とも関係しているように感じる
・治療を促すための保護者へのアプローチ(春の検診後、秋に118日(いいはの日)にちなんでの勧告に加え、歯科衛生士による歯みがき指導の結果で治療勧告をしても受診しないなど)が重要ではないか
・口腔に対する家庭の関心の差が大きい。子どもが痛み等を訴えなければそのまま子どもの意志で歯科受診を決めているようなところが見受けられる
・放課後も土日も部活動や習い事、学習塾等があり(平日では夏場は帰宅が19時頃、そのあとに塾などがあります)また、保護者も仕事で帰りが遅かったりすると、歯科受診に積極的になれない家庭が多いのも現実です
・小→中→高と年齢(学部)が上がるにつれ、受診率が低下する

 


 まとめ

全体的には「経済的、時間的余裕がない」「子どもや保護者の歯と口の健康に対する意識の低さ」などのコメントが目立った。養護教諭のコメントから、受診しない、受診できない理由の根底には経済的貧困や歯科医療への認識・知識不足などが潜在している可能性が考えられる。
その上で、「全ての子ども達がお金の心配をせず歯科医療機関を受診できる」環境整備のため、医療費助成制度の拡充を引き続き関係各所に要請していくこと、歯と口の健康の重要性を理解していただくため、保護者や子どもへの啓発活動も実施していくことが必要である。

 

※詳しい情報は協会事務局へお問い合わせください

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