2023年5月に新型コロナが5類感染症相当に移行後、むし歯の子が増えた、スマホ依存や視力が低下した子が増えたなどの健康状態が悪化しているとの声が医療現場から出されている。協会はその実態を調査・改善するために学校健診後治療調査」を実施した。
17年、19年、21年、23年に実施した調査では、未受診理由の根底には経済的困難、医療への認識・知識不足が潜在している可能性が明らかとなっている。
このような状況に加え、今回の調査では、ネット依存などにより生活様式の変化により、子どもたちの健康状態が悪化していることがわかった。
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【調査の概要】
1.調査の目的
新型コロナ5類移行後における①学校健診での各種健診・検査の要受診率の把握、②要受診者が受診できる環境にあるかの把握、③未受診の児童・生徒の学校での様子や困りごと、健康管理や受診を阻む要因の把握を目的として実施した。
2.調査の対象
千葉県内の国公立、私立の小・中学校、高等学校、特別支援学校1,375校。
3.調査方法
調査票(A4版3枚)を郵送し、2025年9月10日〜10月31日の間に届いた回答から調査した。
4.調査事項
1.2025年度学校健診(歯科、眼科、耳鼻科、内科、運動器)で「健診を受けた児童・生徒数」、「その内要受診となった児童・生徒数」、「要受診判定後に受診した児童・生徒数」の記入。
2.要受診と判定されたにも関わらず、未受診の児童・生徒の学校での困難事例があったか。ある場合は人数、具体例の記入。
3.上記設問の中で児童・生徒の未受診の要因として関連が深いと思われる家庭状況。
4.スマートフォン・ネット依存(SNSやゲーム含む)で学校生活に支障を来している(遅刻・欠席、居眠り・学業に身が入らないなど)と見られる児童・生徒はいるか。
5.回答状況
回答数は222校、回答率は16.15%。
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■ 各科の状況(特徴)
歯科
歯科健診を受けた児童・生徒のうち、23・9%(23年の調査では26・4%)にあたる19746人が「要受診」の診断を受けたが、歯科医療機関を受診したのは、31・6%の6232人だった。未受診率は半数以上の68・4%(23年は63・4%)にのぼった。
養護教諭からは、「歯科の受診率が低いと感じます。結果のお知らせや保険だよりで受診を促していますが、もっと工夫が必要」(小学校)、「年1回クーポンなどで歯科医院を受診しやすくできないか」(中学校)等の報告があった。
口腔崩壊(むし歯が10本以上、歯の根っこしかない未処置歯があるなど咀嚼が困難な状態)の児童・生徒たちの有無については、「いた」と回答した学校が、24・3%となり、前回調査(20・8%)より増加し、口腔の健康は悪化傾向であった。口腔崩壊の状態としては、「むし歯が10本以上ある」との回答が最も多かった。個別事例では、「外国籍の一年女児でCが12本あったが受診勧告を出しても受診しない」(小学校)などの報告があった。
眼科
眼科健診(視力検査をのぞく)を受けた児童・生徒のうち、5・5%にあたる2848人が「要受診」の診断を受けたが、医療機関を受診したのは47・5%の1496人だった。未受診率は半数以上の52・5%(視力検査は66・6%)だった。
個別の事例では、「メガネを作る必要があるが、未受診のままである」「高校生に支障をきたすおそれがある」(小学校)、「生活に支障をきたすおそれがある」(小学校)等が寄せられた。また、「保護者、SSW、児童相談所担当者と連携中である」等子どもの受診における親との連携に苦労を抱える様子がうかがえる。
眼科・視力検査の自由意見欄にゲームやスマホ、SNSに関連しての記述はなかった。
耳鼻科
耳鼻科健診(聴力検査をのぞく)を受けた児童・生徒のうち、13・7%にあたる5177人が「要受診」の診断を受け、医療機関を受診したのは49・9%(2585人)が受診した。
未受診率は50・1%(聴力検査は58・0%)だった。
養護教諭からは、「慢性だからと症状があっても病院を受診しない」(小学校)等の報告が寄せられた。他の設問に比べ、未受診率は低く、個別の困難事例は報告されていないが、鼻水など常に出ているも慢性だからと放置する事例が見受けられた。
内科
内科関連の健診(心臓検査、尿検査、皮膚科項目)を受けた児童・生徒のうち、2・5%にあたる2079人が「要受診」の診断を受けたが、医療機関を受診したのは34・1%の708人だった。未受診率は半数以上の65・9%だった。
養護教諭から寄せられた具体的困難事例は少なかったが、「心の問題、肥満児童・生徒の増加、「アトピー性皮膚炎疑いで湿疹」、「不登校児・生徒の増加」等を困難事例として挙げている学校が多かった。
さらに、不登校で学校健診そのものを受けていない児童・生徒も見受けられる。不登校の児童・生徒の健康管理も今後大きな課題になるのではないかと思われる。
運動器
運動器健診についての質問は今調査から新設した。児童・生徒のうち、1・2%にあたる952人が「要受診」の診断を受けたが、医療機関を受診したのは31・7%の302人だった。未受診率は68・3%だった。
内科関連で報告した件によると、千葉県でも2校で脊椎側弯症の症例が報告されている。肥満による二次障害(高校生に生じた例)もあり、「肥満による下肢痛があるが、本人が受診意欲が無い。だが下肢痛のため体育の出席が出来ないと保健室に訴え、休養に来る。来室頻度も増加している」と受診の意思がないことで問題の解決に至らない悪化するケースもある。
🔳 ネット依存
新たに加えられたネット依存の項目では、ネット依存の児童・生徒がいると答えた学校は222校中96校43・2%だった。いないと答えた22校に比べ、多くの学校で何らかの支障を抱えていることがわかる。
具体的な事例では、SNSでトラブルになってしまったネットやゲーム依存で昼夜逆転の結果、遅刻や不登校が続く。ネットゲームに依存して親の金を盗んで課金するなどの内容が多かった。
中でも、「睡眠不足、視力低下、学校内での人間関係トラブル、学校外での犯罪に巻き込まれる可能性を持ったトラブル」など身体的な健康問題よりも社会的な問題の方が目立つ」(中学校)など、肉体的な面だけでなく、子どもの健全な発育についても考えさせられる回答もあった。ゲームのやりすぎで腱鞘炎になった、依存治療のために入院加療を行った、SNSで自殺企図を投稿、性的な写真で金銭を受け取る、他の児童の実名と写真をネットに無断投稿など、深刻なトラブルにつながっている事例も見られた。
また、社会的なトラブルだけでなく、身体的に視力低下の要因の一つにもなっている可能性も考えられる。視力検査の要受診率は、29・6%と、健診項目の中で最も要受診率が高かった。しかし、自由表記欄にネット依存と視力低下の直接的な因果関係は見られなかった。
🔳 考察
過去の調査同様、未受診による健康悪化が懸念される結果となった。
保護者の受診に対する無関心を筆頭に、実際に児童・生徒に必要な受診ができているかについては、まず、国や自治体が調査を行い、未受診の実態を把握することが求められる。そのうえで、児童・生徒の健全な発育・発達を保障する上で、必要な受診を促し、未受診をなくすことを目的として、国・自治体・学校・医療関係者・地域が連携した積極的な対応が求められる。
今回調査ではネット依存の設問を設けた。
2020年3月から新型コロナの対応として全国一斉休校が行われ、外出自粛で長期休業により、ゲームやインターネットへの依存度が増加したことは間違いない。43・2%の学校が、スマホ・ネット依存が疑われる児童・生徒が「いる」と回答した。ネットが児童・生徒たちに一定の影響を及ぼしていることは間違いない。対策が急がれる。




















