協会は下記のように「医療DXの推進に関する工程表」についてのパブリックコメントを提出しました。会員の先生方でも自由に同コメントの提出が可能ですので、ご検討いただきますようお願いいたします。募集要項等は下記からご確認ください。締め切りは4月6日(木)になります。
医療DXの推進に関する工程表(骨子案)に関する御意見の募集について|e-Govパブリック・コメント
2023.03.22
医療DXの推進に関する工程表(骨子案)に関する御意見の募集について
提出先:内閣官房医療DX推進チーム
千葉県保険医協会
会 長 岡野 久
<基本的な考え方について>
- 国民の更なる健康増進について保険医療データをPHRとしてより良い医療に生かす点については大いに賛同するところもあるが、もし国民一人一人の個人データが営利目的の保険会社等に使われ患者、国民に一方的な不利益をもたらす事があってはならないと考える。個人情報が漏洩せず、当該個人のコントロール権が守られている必要がある。
- 医療情報という非常に繊細な情報の共有にはセキュリティを確保できることが求められる。国が充分な情報提供や費用支援を行う必要がある。経済的にも人的にも余裕のない医療機関では平時だけでなく、災害時等緊急時には対応出来ないためデジタルによって、すぐに医療連携や情報共有ができるわけではないことを十分理解して国が先導してほしい。
- 現行のオンライン資格確認システムやそれ以前のコード化問題で医療現場の業務は非常に煩雑になってきており、到底効率化とは言えない真逆の状況となっている。医療現場がどうしたら円滑に業務が遂行できるかを熟知せずにデジタル化のみ進めても全く意味が無い。
- 複雑なITシステムに対応するにはITスキルに強い人材を余分に雇う必要があるので費用増になる。その視点で考えると運営コスト軽減に結びつくと結論付けるのには無理がある。
- 医療情報の二次利用の環境整備について営利団体であるヘルスケア産業が医療情報を提供するには、国民の合意が必要ではないか。例えば個人情報を生命保険会社等に知られて、本人が不利益を被る可能性がある。個人情報保護法にも抵触する問題である。
<具体的な施策及び到達点について>
(1)マイナンバーカードと健康保険証の一体化の加速について、任意取得であるマイナンバーカードに健康保険証を一体化することについては、国民的理解と合意が得られていない。オンライン資格確認体制を義務化することでマイナンバーカード取得も事実上「義務化」となる点には矛盾が生じている。この点について国会審議や国民に説明もなく、義務化を強要するのは問題である。紙ベースの健康保険証廃止も国民に説明し議論を経る必要がある。現行の健康保険証で問題なく進められてきた医療界にとって紙の保険証が無くなれば災害時、停電時等にどう資格確認を行うのか。現にマイナンバーカードによるオンライン資格確認システムを導入している医療機関の4割で資格確認が出来ないトラブルが発生している。その点でも現行の健康保険証による医療受診に代えて、マイナンバーカードによる受診へのシステム変更に踏み切ることは拙速である。マイナンバーカード取得困難者等社会的弱者に対する視点が欠落している。これらの人々を切り捨てる差別社会になりかねない。システム変更が強行された場合医療崩壊から医療壊滅にまで進んでしまうのではないか。このことは患者国民の命を危険に晒す行為ではないのか。
(2)全国医療情報プラットフォームの構築
①共有可能な医療情報の範囲の拡大、電子カルテ情報の標準化等医療情報の共有がより良い医療遂行にとって必要になる事は充分理解できるが、医療現場の負担にならない方法で遂行してほしい。また、医療情報は非常に繊細な情報であり、誰でもいつでも見て良いというものではない。必要性の高いと思われる人が必要な時にだけ見られるという規制がなければいけない。情報共有する以前に、個人情報の在り方が厳格に示され、現場の状況に合わせ責任もった体制づくりをすすめるべきである。
②自治体、介護業者等とも必要な情報を安全に共有出来る仕組みの構築および個人情報を如何に守り共有して使えるかが重要である。前述した様に必要な情報を提供し人的にも費用的にもセキュリティ等を確保する為の支援をすべきである。
(3)診療報酬改定DX
診療報酬改定点数表におけるルールの簡素化・明確化とあるがこれはデジタル化と関係はない。デジタル化に関わらず達成しているべきことであり、マイナンバーカードの有無により患者窓口負担に差が出るのは差別であり、診療報酬で格差をつける点数は撤廃すべきである。ただし、オンライン資格確認システムの導入により医療機関の経費が増えることに対し、診療報酬ではない補助金等による財政支援を行うべきである。
(4)医療DXの実施主体
国が医療DXありきで医療現場や国民の同意なく強引に進めていくべきではない。より良い医療を提供しやすくなる為にデジタル化する発想でなければならない。患者・国民に利益をもたらす「デジタル化」でなければならないと考えている。
以上