千葉県保険医協会

声明・主張・談話

HPVワクチン問題に関する名誉毀損訴訟一審判決結果に関する見解について ~判決内容とワクチンの有効性・安全性はまったく関係ない~

2019.04.18千葉県保険医協会 会長 岡野 久

3月26日、東京地裁で元信州大医学部長の池田修一氏がHPVワクチン接種後の健康影響を調べる研究内容の寄稿について、医師でジャーナリストの村中璃子氏らを名誉毀損で訴えた裁判の判決が行われた。裁判官は「被告らが十分な裏付け取材もせずに、繰り返し原告の行為を『捏造』と記載した影響は甚大」とし、原告の訴えを全面的に認め、330万円の賠償金の支払い等の判決を言い渡した。裁判では「子宮頸がんワクチンを打っていないマウス1匹」の実験結果をもって、「N=1とは知らなかった」、「捏造ではなく他の研究者の実験結果の引用」などとする原告の言い訳を受け入れ、公共性・公益性と科学を加味しない判決が下され、非常に残念な結果となった。
 また、科学の問題を名誉棄損にすり替えた裁判であり、当会の医師・歯科医師はこのような科学を否定するような行為を容認することはできない。理事会として判決の結果と子宮頸がんワクチンの有効性・安全性とはまったく関係ないことを宣言する。
 この裁判の経過として、池田修一信州大学元教授が2016年3月16日TBS「NEWS23」で、「子宮頸がんワクチンを打ったマウスだけに脳に異常な抗体が沈着して、海馬の機能を障害していそうだ」、「明らかに脳に障害が起こっている。ワクチンを打った後、こういう脳障害を訴えている患者の共通した客観的所見が提示できている」と説明する映像が全国放送されたことに起因する。
 この放送を観た視聴者はHPVワクチンの示された副反応に憤り、その後の接種行動にも大きな影響を与えることとなる。積極的勧奨の差し控えから5年が経過し、一時期70%近い接種率を誇ったが、今や定期接種にもかかわらず、接種率は1%という事態となっており、WHOも政府に接種を強く推奨している。
 前段のTBSの放送に対し、医師でジャーナリストの村中璃子氏が月刊「Wedge」に「子宮頸がんワクチン薬害研究班 崩れる根拠、暴かれた捏造」と題した記事を寄稿し、同研究発表の杜撰さを指摘し、国民に大きな反響を呼んだ。しかし、その後池田氏は学会や論文など科学の場での反論を行わず、突然、名誉毀損として、司法の場にHPV問題を持ち込んだ。
 信州大学の調査結果では、実験が予備的なものであることを知りながら断定的な発表を行い、世間に大いなる誤解を与えた事実に関する責任は重いとして池田氏に猛省を促し、再現実験と発表の修正を求めている。しかし、2年以上たっても再現実験の報告も、発表の修正の報告も出されていない。また、厚労省は「池田氏の不適切な発表により、国民に対して誤解を招く事態となった」、「池田班の研究結果では、HPVワクチン接種後に生じた症状がHPVワクチンによって生じたかどうかについては何も証明されていない」と異例の見解を公表している。
 千葉県保険医協会は科学的な立場、医学的な立場でワクチンの有用性を評価し、広く接種を促し、VPDを防ぐことは公衆衛生の基本であると考える。政府にはHPVワクチンの「積極的勧奨の差し控え」を撤回し、接種率が上がるよう一日も早い対策をするよう望む。

 

以上

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