【国会軽視も甚だしい】デジタル庁設置やマイナンバー利用拡大などを盛り込んだ「デジタル社会形成基本法案」をはじめとしたデジタル改革関連5法案が4月6日、衆議院本会議にて採決・可決された。デジタル改革関連6法案(自治体情報システム標準化法案含め)は、個人のプライバシー権などに多大な影響を孕むとともに、法案関連資料は2千頁以上に及び、十分に時間をかけた慎重な審議が求められている。にもかかわらず、法案関係資料で発覚した多数の誤りについて国会への報告は後回しにされた上、5法案を束ねて一括審議を求めるなど国会軽視の姿勢も甚だしいと言わざるを得ない。
【個人情報保護ないがしろに情報利活用】法案は、「個人情報」の定義(範囲)をより狭いものに変更した上で、個人情報保護3法を一元化し自治体独自の個人情報保護条例を実質上形骸化することなどを通じて、行政が持つ膨大な個人情報について企業等による利活用を大幅に推進する内容である。個人情報保護の理念・規定が決定的に欠落しており、本人の知らないところで、個人情報がやり取りされ、リクナビ事件に見られたような企業によるプロファイリングやスコアリングが野放図に拡大されていくことが懸念される。
【自治体独自の助成策の抑制・後退】また、法案では、自治体の情報システムの「共同化・集約の推進」「標準化」と称して、自治体の主要業務の情報システムを原則国が示す仕様に合わせるよう求めており、地域住民が築き上げてきた医療・介護・福祉等に関わる自治体単独事業や上乗せ・横出しサービスなどが抑制されることが強く危惧される。給付金支給や災害対応などを口実にマイナンバーと預貯金口座の紐付けを促す制度も盛り込まれている。「骨太の方針」が求める高齢者医療における金融資産に応じた患者負担増の仕組みの構築に向けて地ならしを進めるものである。
【官民癒着の強化、医療・社会保障削減に圧力】更に、マイナンバー利用拡大やデータ利活用を強力に進める司令塔として、首相をトップに据え、強い勧告権と巨額の予算を有するデジタル庁を創設するとしている。職員 500 人のうち100 人以上を民間企業より登用し、「デジタル監」は民間出身者を想定し、非常勤職員は兼業も許され、出身企業の給与補填も容認されるなど、政府と ICT 関連業界の癒着が一層強められ、巨大な利益誘導が図られることとなる。財源の負担は国民にしわ寄せされ、医療・社会保障費の更なる削減圧力が高まることも危惧される。 報道によれば、日本維新の会と与党の合意により、国と自治体の役割として「公正な給付と負担の確保」を加える法案修正がされるなど、医療・社会保障の削減を一層強める内容に改悪されている。 デジタル改革関連6法案については、個人情報保護規定の強化、自治体独自事業の存続・拡充の制度的保障、デジタル庁創設・マイナンバー利用拡大の撤回など抜本的修正がなされない限り、徹底審議の上で廃案とすることを強く求める。