厚労省は8月30日に開催した第 181回社会保障審議会医療保険部会で、マイナ保険証の さらなる利用促進の取り組みについて追加の提案を行った。内容は、マイナ保険証の利用実 績が低い医療機関・薬局に対する個別アプローチと、マイナ保険証を基本とする仕組みへの 円滑な移行を見据えた周知広報であり、さらなる利用促進に向けて梃入れを図るものとな っている。
5月からの集中取組月間で多くの施設がPR に協力したにもかかわらず、7月時点の利用 実績は11.13%にとどまった。これはPR 不足によるものではなく、患者がマイナ保険証の メリットを実感できず現行の健康保険証による受診を選択したという当然の結果に過ぎな い。本会は、医療機関に利用率低迷の責任を押し付け、不当に圧力をかける推進策に強く抗 議し、即刻中止を求める。
低利用率の施設は「療担違反の恐れ」と威圧
厚労省は提案の中で、利用実績が著しく低い医療機関を取り上げ、「患者がマイナ保険証 を使う機会を奪っている」可能性を示唆し、そうした場合には療養担当規則違反となる危険 性にまで言及した。この指摘に対しては同審議会で、診療側の委員から「威圧的な表現」と 不快感を示す発言が出されたが、まさに医療機関をマイナ保険証推進のツールとして位置 づけ、利用実績の低い施設を障壁とみなす姿勢が表れたもので断じて許されない。また、オ ンライン資格確認によるトラブルが発生する中、患者に10割負担を押しつけないために現 行の健康保険証による受診を勧奨することは診療をスムーズに行う点で合理的であり、利 用促進に反する行為とはいえない。
厚生局からの個別働きかけは不当 PR は義務ではない
また、具体的な働きかけとして、利用実績が著しく低い施設に選定された旨をメール等で 事前通知した上で、厚生局を通じて個別事情を確認することが提案された。厚労省は医療機 関によるPR の状況について「利用促進にあたり困ったことがあるのではないか」と懸念し、 必要な支援を検討しているようだが、問題認識のピントがずれていると言わざるを得ない。 そもそもPR への協力は任意であり、利用実績が上がらないために厚生局から指摘を行う のは不当な圧力だ。診療と無関係の実務負担を強いられる合理的な理由は一切ない。