千葉県保険医協会

声明・主張・談話

2021.06.17 【理事会声明】歯科医師による新型コロナワクチン接種は 法的な根拠を担保してから実施すべき

厚労省は4月26日付で事務連絡を出し、歯科医師による新型コロナワクチン接種のための筋肉内注射の実施について、法的な整理を示した。
 その事務連絡が発出されて以降、全国各地で実技研修が行われ、接種の迅速化の一手段として全国紙および各種メディアからの報道が続いている。歯科医師の間では少しでも社会に貢献できるのなら協力したいとの前向きな意見がある一方で、万一の医療事故に対する責任の所在や法的な根拠はどうなのか、と心配する声も聞かれている。
 歯科医師法第1条は歯科医師の任務を「公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もつて国民の健康な生活を確保する」と規定している。新型コロナウイルス感染症が国民の生命と健康を脅かす中で、その対策に参画することは歯科医師としての職業的使命でもあり、必要に応じて安全性を担保してのワクチン接種への協力を惜しむものではない。しかし、新型コロナワクチン接種の体制確保は、ワクチンの開発・供給を巡る動向の中で充分に想定しえた課題である。厚労省が、円滑に対応できるよう予め法律による対応に動かず、人材の逼迫が起こってから緊急避難的に解釈する対応をとったことには問題がある。
 事務連絡は、ワクチン接種のための筋肉内注射は医行為に該当し医師法第17条に違反するとした上で、3点の条件(①歯科医師の協力なしにはワクチン接種が実施できない、②歯科医師に筋肉内注射の経験があるか必要な研修を受けている、③被接種者の同意)を満たす場合、「公衆衛生上の観点からやむを得ないものとして、医師法第17条との関係では違法性が阻却され得るものと考えられる」とし、集団接種会場に限り、医師の監督下で歯科医師によるワクチン接種の筋肉内注射を可能とした。これは歯科医師によるPCR検査の検体採取についての法的整理と同じ手法でである。
 歯科医師による新型コロナワクチン接種については、PCR検査の検体採取以上に深刻なリスクを伴うことは明らかであり、検討には一層の慎重さが求められる。それにもかかわらずPCR検査の検体採取と同様に行政解釈により歯科医師の実施を可能とすることは不適切である。本来的には国会審議を通じて必要性と安全性について広く合意し、立法により適法性を確保した上で実施させるべきものであり、単なる事務連絡で済ませられるような話ではない。
医師法の定めを超えて歯科医師の協力が必要と判断するのであれば、責任を現場任せにして解釈と条件だけを示すのではなく、法律を根拠に実施できる条件を整えることが行政の責任である。ワクチンが必要な国民に円滑に行き渡るようにするとともに、これからも起こりうる緊急事態への対応に協力する歯科医師の法律上の位置づけを明確にするよう厚労省の責任ある対応を求める。

2021.05.13 75歳以上窓口負担2割化衆議院強行採決に抗議する ~新型コロナウイルス感染拡大の下、負担増をなぜ続けるのか~

5月11日、「75歳以上の医療費窓口負担2割化」などを内容とする健康保険法等の一部改正案が自民、公明、維新、国民民主の各党の賛成多数で採決・可決された。首都圏を中心に3度目の緊急事態宣言が出され未だに収束の兆しが見えない最中、コロナ対策を優先課題とし、それらの審議に注力する時期にもかかわらず、国民に更なる痛みを強いる「窓口負担2割化」法案をわずかな審議時間で採決を強行したことに対し、当会として政府に厳しく抗議する。
今後、審議の舞台は参議院に移ることになるが、今国会で徹底審議の上、廃案を求める。

 政府は衆議院審議において、政令で2割負担の対象とする単身世帯「年収200万円以上」(課税所得28万円以上)、夫婦世帯「年収320万円」(所得が多い方が同28万円以上)について「負担能力がある」と繰り返し答弁していたが、負担増による受診控えを見込んで給付費を年1,050億円も削減できると推計している。菅義偉首相は、受診控えの影響額も踏まえず「直ちに健康に影響しない」と無責任な答弁に終始したが、過去の負担増が平均寿命の押し下げにつながったという学識者の指摘もあり、抑制効果が大きく出ることも明らかになっている。
また田村憲久厚労相が「誰かが負担しなければならない」と居直る一方、参考人として意見陳述(4月20日)した日本福祉大学の二木立・名誉教授は「医療に受益者負担を適用すべきではない」として、税・保険料で「応能負担」を求めるべきだと強調した。負担増は大企業・富裕層にこそ求めるべきである。

 この間、私たちも取り組んだ「2割化反対」を求める国会請願署名は100万筆を超えた。コロナ感染症が依然猛威を奮い、日々の暮らしや健康への不安が高まっている中、さらに負担を押し付けることへの反対の声が高まっている。
いま政府、国会が全力を上げねばならないのは、国民の生活、生業の保障であり、病床や検査体制の確保、速やかなワクチン接種など医療提供体制を立て直すことであって、断じて「2割化」導入ではない。
私たちは、あらためて「2割化」に反対し、地域の患者・住民とともに成立阻止に向けた取り組みを進めていくことを表明する。

2021.04.15 デジタル改革関連5法案の衆議院本会議での採決に抗議する

【国会軽視も甚だしい】デジタル庁設置やマイナンバー利用拡大などを盛り込んだ「デジタル社会形成基本法案」をはじめとしたデジタル改革関連5法案が4月6日、衆議院本会議にて採決・可決された。デジタル改革関連6法案(自治体情報システム標準化法案含め)は、個人のプライバシー権などに多大な影響を孕むとともに、法案関連資料は2千頁以上に及び、十分に時間をかけた慎重な審議が求められている。にもかかわらず、法案関係資料で発覚した多数の誤りについて国会への報告は後回しにされた上、5法案を束ねて一括審議を求めるなど国会軽視の姿勢も甚だしいと言わざるを得ない。

 

【個人情報保護ないがしろに情報利活用】法案は、「個人情報」の定義(範囲)をより狭いものに変更した上で、個人情報保護3法を一元化し自治体独自の個人情報保護条例を実質上形骸化することなどを通じて、行政が持つ膨大な個人情報について企業等による利活用を大幅に推進する内容である。個人情報保護の理念・規定が決定的に欠落しており、本人の知らないところで、個人情報がやり取りされ、リクナビ事件に見られたような企業によるプロファイリングやスコアリングが野放図に拡大されていくことが懸念される。

 

【自治体独自の助成策の抑制・後退】また、法案では、自治体の情報システムの「共同化・集約の推進」「標準化」と称して、自治体の主要業務の情報システムを原則国が示す仕様に合わせるよう求めており、地域住民が築き上げてきた医療・介護・福祉等に関わる自治体単独事業や上乗せ・横出しサービスなどが抑制されることが強く危惧される。給付金支給や災害対応などを口実にマイナンバーと預貯金口座の紐付けを促す制度も盛り込まれている。「骨太の方針」が求める高齢者医療における金融資産に応じた患者負担増の仕組みの構築に向けて地ならしを進めるものである。

 

【官民癒着の強化、医療・社会保障削減に圧力】更に、マイナンバー利用拡大やデータ利活用を強力に進める司令塔として、首相をトップに据え、強い勧告権と巨額の予算を有するデジタル庁を創設するとしている。職員 500 人のうち100 人以上を民間企業より登用し、「デジタル監」は民間出身者を想定し、非常勤職員は兼業も許され、出身企業の給与補填も容認されるなど、政府と ICT 関連業界の癒着が一層強められ、巨大な利益誘導が図られることとなる。財源の負担は国民にしわ寄せされ、医療・社会保障費の更なる削減圧力が高まることも危惧される。  報道によれば、日本維新の会と与党の合意により、国と自治体の役割として「公正な給付と負担の確保」を加える法案修正がされるなど、医療・社会保障の削減を一層強める内容に改悪されている。 デジタル改革関連6法案については、個人情報保護規定の強化、自治体独自事業の存続・拡充の制度的保障、デジタル庁創設・マイナンバー利用拡大の撤回など抜本的修正がなされない限り、徹底審議の上で廃案とすることを強く求める。

2021.03.31 マイナンバーカードの保険証利用には強く反対し、無期延期を求める

厚生労働省は3月下旬より本格運用を開始するとしていたマイナバーカードの保険証利用について、社会保障審議会医療保険部会(3月26日開催)で本年10月まで運用を延期することを報告し、了承された。 
 この間、システムの本格稼働に向けて、3月4日より一部医療機関で試験運用が始まっていたが、資格情報の確認ができない等のトラブルが続出。同省によると、「加入者データの不備による資格確認エラー」「院内システムへの読み取りエラー」などを要因として挙げている。また、加入者データについては昨年10月以降、保険者においてオンライン資格確認システムへの登録が進められているが、「情報が登録されていない」と表示されるケースが相次いでいる。他人の医療情報が医療機関の端末に示される恐れがあり、正確な管理ができていない。極めてお粗末な事態と言わざるを得ない。
 3月23日時点で試験運用を行っている機関は全国24都道府県54施設。そもそも500機関で開始する予定であった試験運用自体が大幅に遅れており、カードリーダーの申請件数は病院で60.4%、医科歯科診療所で36%程度。マイナンバーカードの健康保険証としての利用申請件数も現時点で311万件、総人口の2.5%にも満たない。これら運用システムやデーター不備、導入医療機関数、健康保険証利用申請件数などいずれを見ても、運用開始できる実質的な体制が整っていないことは明らかである。
 政府は、運用日程ありきでオンライン資格確認システム導入の補助金事業等で医療機関に導入を急がせているが、このまま強引に運用拡大を進めても、現場の混乱は目に見えている。マイナンバーカードを健康保険証として利用させることは、医療現場に無用な混乱を招き、国民が安心して保険診療を受けることの障壁になると言わざるを得ない。
 本会は、医療情報とマイナンバーの紐づけがなし崩し的に拡大される事態に繋がるマイナンバーカードの保険証利用には強く反対し、無期延期を求める。そして、関係機関は従前通り、健康保険証で医療が受けられることを広く国民に周知するよう関係機関へ求めていく。

2021.02.10 金パラ「逆ザヤ」解消と価格改定制度の抜本的な改善を求める

1月27日、中医協総会は歯科鋳造用金銀パラジウム合金(以下「金パラ」)の「随時改定Ⅰ」の実施を確認し、4月1日以降の金パラの告示価格は1g2,668円に決定された。現行価格の2,450円から218円の引き上げとなるものの、実勢価格と告示価格の間に生じる「逆ザヤ」の根本的な解決にはならない。
 2018年夏から値上がりを始めた金パラ価格は、その後も高騰を続け、長期にわたり歯科医院を「逆ザヤ」問題で苦しめてきた。
 全国保険医団体連合会が実施した「金パラ『逆ザヤ』シミュレータ」の千葉県分の平均購入価格(カッコ内は告示価格との差)は、2020年1月2,544円(▲869)、2月2,737円(▲1,062)、3月2,532円(▲857)、4月2,774円(▲691)、5月2,607円(▲285)、6月2,602円(▲282)、7月2,665円(▲3)、8月2,798円(▲136)、9月2,854円(▲192)、10月2,878円(▲428)となっており、その後も2,800円から2,900円の間で推移していると推測される。
 2020年3月の中医協で随時改定Ⅱの導入が決定され、2020年7月には改定が実施されたものの、実勢価格と告示価格の乖離がほぼ解消されたのは上記のとおり7月のみである。2020年1月から10月までの「逆ザヤ」を平均すると1gで528円、30gで15,840円もの乖離が生じていることになる。告示価格を素材価格からの推計で算出している限り、実勢価格を下回る傾向が強いことがこの調査からも明らかである。
 また、7月改定に係る参照期間である1月から3月の平均よりも、10月改定に係る参照期間の4月から6月の平均のほうが高いにもかかわらず、2020年10月はマイナス改定が行われたことになる。これらは現行の基準材料価格改定および随時改定の仕組みの中で発生する「タイムラグ」で説明がつくものではない。当会は、告示価格の改定にあたっては素材価格からの推計ではなく、合金の実勢価格を調査し、その結果を告示価格に反映することを求める。
 さらに1月13日の中医協では、14カラット金合金の価格計算に誤りがあったことが公表された。多くの歯科医師が長期にわたる金パラの「逆ザヤ」問題により、歯科用貴金属の価格決定の根拠に不信感を抱いている中での失態であり、現行の価格改定制度への信頼はますます揺らいでいる。
 厚労省はこの間、基準材料価格改定時に実施している特定保険医療材料価格調査の結果を非公表としてきた。現行の価格改定制度に対する信頼を取り戻すためにも、価格決定に関するデータやプロセスをすべて公表すべきである。また、「逆ザヤ」問題を早急に解決すべく、告示価格と実勢価格の乖離の実態を速やかに検証し、抜本的な制度改善を行うよう強く求める。

2021.01.26 核兵器禁止条約の発効を歓迎し、日本政府の批准を求めます

1月22日、核兵器の開発・製造・保有・使用等を禁じる歴史的な核兵器禁止条約が発効しました。千葉県保険医協会は、この条約の発効を心から歓迎し、長年にわたり条約の発効のために奮闘されてきた被爆者、そして核兵器廃絶と平和のために取り組まれてきた世界中の人々に改めて敬意を表するものです。
 今回の発効によって、核兵器は国際的に違法化されました。条約の前文には、「核兵器のいかなる使用も人道の諸原則および市民的良心の命ずるところに反する」と明記、核兵器を人道や市民の視点から包括的に禁止することが謳われています。特に「核兵器による威嚇」にまで踏み込んで禁止、その意味で画期的なものであり、また、「核兵器使用の被害者(ヒバクシャ)(中略)にもたらされた容認しがたい苦難」と前文に「ヒバクシャ」の文言が盛り込まれ、被爆者に寄り添っていることも特徴です。
この条約に対して日本政府は、米国の核抑止力に依存し、「核保有国と非保有国、国際社会の分断をもたらす」として署名・批准を未だに行っていません。その姿勢は国内外から批判を浴びています。唯一の戦争被爆国として、こうした国際社会の大きな流れに背を向けることなく、核兵器廃絶へ向けた具体的なアプローチを行うリーダーとしての役割を果たすべき、と考えます。
国連のグテレス事務総長は、「この条約は核兵器のない世界という目標の実現に向けた重要な一歩」とした上で、「核兵器の使用がもたらす壊滅的な人道的、環境的被害を防ぐための緊急行動」の必要性を提示。「国連にとって核兵器の廃絶は軍縮分野の最優先事項」として各国に核兵器廃絶の実現に向けた協力を呼びかけました。
 「戦争は最大の健康破壊」と言われています。健康を守る医師、歯科医師で構成する千葉県保険医協会は、核兵器が廃絶され核戦争の心配がない世界を望んでいます。今後、条約の締約国会議が行われていく中で、核兵器廃絶の道筋がつけられていくことを大いに期待したいと思います。

2020.12.10 75歳以上の窓口負担2割導入の自公「合意」に抗議する ~新型コロナウイルス感染拡大の下、負担増を続けるのか~

報道によれば、75歳以上の医療費窓口負担を原則1割から2割に引き上げることについて、年収200万円以上を対象にすることで自民党、公明党が合意したとされる。これが事実であれば、約370万人もの高齢者の窓口負担が2割になる。高齢者のいのちと健康を脅かす負担増をコロナ禍の下でも続ける自民党、公明党に強く抗議する。

 

新型コロナの教訓は高齢者ほど早期治療が大切

新型コロナの感染拡大が続く中、受診控えによる疾病・心身の状態悪化も多数報告されている。新型コロナ感染者で重症化する割合が高いのが高齢者である。さらに、高齢者ほど高血圧、糖尿病などの基礎疾患を抱えている。窓口負担の引き上げは高齢者の早期治療の機会を妨げることになる。

 

高齢者の負担割合は3分の1でも不公平ではない

そもそも75歳以上の年収に占める患者負担額の比率は、40代の3倍以上となっている。高齢者の負担割合が1割で、現役世代の3分の1であっても、決して不公平ではない。

 

現役世代の負担軽減は国庫負担の増額で

政府は現役世代の負担軽減を負担増の理由にあげているが、年収200万円以上を対象に2割負担を導入しても現役世代の負担軽減は年約880億円、一人当たり約800円の減額である。新型コロナ対策で投じた補正予算を考えれば国が負担できない金額ではない。
現役世代の負担軽減は、後期高齢者医療制度への国庫負担割合の引き上げを検討すべきである。

今、必要なのは、感染拡大の防止と医療体制の確保に全力を挙げるとともに、医療や介護の負担を軽減し、すべての人が安心して医療と介護が受けられるようにすることである。

75歳以上の医療費窓口負担2割導入の自公「合意」撤回を強く求める。

2020.10.27 核兵器禁止条約の批准50か国到達を歓迎する

10月24日(日本時間の25日)、17年7月に国連で採択された核兵器禁止条約をホンジュラスが批准し、批准国が50か国に到達、90日後にはこの条約が国際条約として発効することが決まった。千葉県保険医協会は、この条約の発効を心から歓迎し、長年にわたり条約の採択と発効のために奮闘されてきた被爆者、そして核兵器廃絶と平和のために取り組まれてきた世界中の人々に改めて敬意を表するものである。
 75年前の1945年8月、広島・長崎に投下された原爆は、21万人を超える人々の命を奪い、生き残った人々も現在に至るまで身体的、精神的、社会的な苦痛を強いられてきた。この条約は、人類史に比類ないこうした状況をもたらした核兵器の開発、実験、製造、備蓄、移譲、使用、そして威嚇をも禁止する内容を持ったものである。さらに、「核兵器使用の被害者(ヒバクシャ)(中略)にもたらされた容認しがたい苦難」と被爆者に寄り添いつつ、「核兵器のいかなる使用も人道の諸原則および市民的良心の命ずるところに反する」と核兵器の非人道性を主張している。「核のない世界」を展望し、人類の未来に新たな光をもたらす条約と言って過言ではない。
 一方、日本は、「現実の安全保障を踏まえたものではない」「核兵器廃絶へのアプローチが違う」として、この条約には参加しないままである。唯一の戦争被爆国である日本は、こうした国際社会の大きな流れに背を向けることなく、核兵器廃絶の世界のリーダーとして、その役割を発揮すべきと考える。
 条約の発効は、核兵器を非人道兵器とする国際的取り決めの誕生となり、核保有国にも非核保有国にも大きなインパクトを与えるものである。今後、締約国会議が行われ、具体的な核兵器廃絶の道筋がつけられていくことを大いに期待したい。

2020.03.05 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策に関する緊急要望書

内閣総理大臣 安倍 晋三 殿
厚生労働大臣 加藤 勝信 殿

 

貴職におかれましては、国民医療の確保のために尽力しておられることに敬意を表します。 当会は、県内の医師・歯科医師 4180 人余で構成する開業医保険医の団体で、国民医療の充実をめざし様々な活動を行っております。 日本国内での COVID-19 の感染者が増加しています。千葉県での感染者数は16人(3/3 現在)となっており、感染拡大が懸念され、同時に医療機関への影響も広がりつつあります。 当会の会員からは「感染対策に必要なマスクや消毒用エタノールの供給が滞っている。北海道だけでなく、千葉県の医療機関にも供給してほしい」との声が寄せられています。 先日、日本臨床微生物学会が発出した「新型コロナウイルス(2019-nCoV)感染(疑いを含む)患者検体の取扱いについて」では医療従事者の個人防具として手袋、サージカルマスク、ゴーグル、アイシールド、ガウンの着用等で感染予防を行うこととし、呼吸器症状を呈する患者にはサージカルマスクを着用させること等、標準予防策の遵守を周知しています。しかし、日常診療において、これら防護具による予防策は限界を迎えており、早急な対策を強く求めます。 また、こういった状況を鑑みれば、先月28日に貴職に要請した「2020 年診療報酬改定」への対応は難しく、4月からの実施は延期すべきです。以下、COVID-19 対策を要望いたします。 

 

[要望項目]
① 医療機関や高齢者が多い介護施設に対しては診療に必要なマスクおよび防護具、消毒薬等優先的に供給すること。また万一、休業した場合の所得補償を行うこと。
② 治療薬やワクチンの早期開発に向けて研究開発費等を早急に予算化し実施すること。
③ 2020 年診療報酬改定は市場価格が急騰している材料価格の改定を除き、実施を半年間延期すること。そのうえで、延期した診療報酬改定分は補填をすること。
④ 2020 年 3 月 31 日に到来する施設基準の経過措置期限の延長をすること。
⑤ 感染症危機管理体制の強化、並びに健康医療情報を学術的な見地から国民に発信し情報共有ができる「日本版CDC」を創設すること。

以上

2020.03.05 歯科鋳造用金銀パラジウム合金の「逆ザヤ」解消にはほど遠い基準材料価格改定に強く抗議する

厚生労働大臣 加藤 勝信 殿

 

3月5日、2020年診療報酬改定点数および基準材料価格等が告示され、歯科鋳造用金銀パラジウム合金の告示価格は1g2,083円に決定された。 現告示価格30g50,250円から62,490円と12,240円の引き上げにとどまり、全く「逆ザヤ」を解消できる価格ではない。歯科医院の窮状に目を背け、抜本的な改革を怠ってきた厚労省の不作為に対し、厳重に抗議する。  2018年9月以降、金銀パラジウム合金の市場価格が高騰を続ける中、歯科医院は告示価格を大幅に上回る価格での購入を余儀なくされ、1年半もの間「逆ザヤ」に苦しんできた。  当会の会員から寄せられたアンケートによると、金銀パラジウム合金の購入価格(税込)の平均は2019年9月54,511円(▲10,711円)、10月58,743円(▲8,493円)、11月59,806円(▲9,556円)、12月63,029円(▲12,779円)、2020年1月69,630円(▲19,380円)、2月74,463円(▲24,213円)と急激な価格上昇である。同期間内での購入最高金額は93,170円(2020年2月)で、42,920円もの「逆ザヤ」である。今回の告示価格30g62,490円では逆ザヤを解消するどころか、更に継続して赤字を負わせるものであり、断じて容認できない。 厚生労働省はいつまで歯科医院に困難を強いるつもりなのか。直ちに「逆ザヤ」を解消するよう強く要求する。 また、現行の基準材料価格改定および半年ごとの随時改定の仕組みの下では、歯科医療保険制度が健全に発展していくことはもはや不可能である。「逆ザヤ」を生み、歯科医院を追い詰める制度は徹底的に見直しを行い、抜本的な解決手段を講じること重ねて要求する。

2019.11.21 「科学的言論を封じる名誉棄損訴訟」控訴審判決に対する見解

⑴医師でジャーナリストの村中璃子氏の一審敗訴が取り消されたことは大いに歓迎する。今後、村中氏が執筆活動を再開され、活躍されることを期待する。
⑵池田氏の不適切な発表が、「データの捏造」ではなかったとして、科学的に根拠のないまま結論を導き出したことに対して捏造ではないとされたことは到底受け入れられない。
⑶一例のデータに基づき結論を出し、「不適切な発表により国民に対して誤解を招く事態となったこと」は科学者および国民の常識からすれば「研究結果の捏造」と言われても仕方がないと考える。
⑷「不適切な発表により国民に対して誤解を招く事態となったこと」は真に遺憾であり、捏造と批判されて当然と考える。したがって、上告審においても村中氏を支援していくこととする。
⑸池田氏の不適切な発表は、仮に捏造と認定されなくとも、研究者として到底許されるものではなく、今後もこれを批判していく。
⑹池田氏の不適切な発表などにより、HPVワクチンの積極的勧奨が中断していることは非常に残念である。年間一万人が子宮頸がんに罹患し、三千人が亡くなっている悲惨な現状を克服するため積極的勧奨の再開を求めて運動をしていく。

以上

2019.06.16 第48回千葉県保険医協会総会決議

政府の社会保障費抑制策は、地域住民の命と健康を脅かし、構造的な貧困と格差を引き起こしている。経済的理由による受診手控えや治療を中断する人が増え、所得の格差による健康格差が生じている。また、病院の統廃合や医師数の抑制による医療提供体制の縮小なども同時に進められ、今後、「大きなリスクは共助、小さなリスクは自助」を基本とするあらゆる世代への負担増が計画されている。
 しかし、これ以上の患者負担増と社会保障制度改悪によって、医療の公平性が損なわれ、更なる医療崩壊を招くことは明らかである。すべての国民がいつでも、どこでも、だれもが安全に、安心して医療が受けられるよう、憲法25条に基づく、社会保障としての医療政策へ転換すべきである。
 さらに今年10月から消費税増税を行おうとしているが、すでに景気は後退局面に入ったとの指摘もあり、多くの国民は景気回復を実感していない。消費税増税は国民生活を更に冷え込ませ、私たち開業医の経営も悪化させるもので、断じて容認できない。
 政府は社会保障費の増大が国の財政赤字の原因としているが、法人税減税等の税収不足がその大きな要因である。今必要なことは10%への消費増税を中止し、大企業や富裕層に応分の負担を求め、社会保障費を抜本的に増やすことである。
 また、安倍首相は自民党大会で憲法に自衛隊を明記するなどとする憲法9条の改定に強い意欲を示しているが、日本国憲法の平和主義に反するものであり、断固反対する。
 第48回定期総会にあたり、 私たち医師・歯科医師は、すべての国民が健康で幸福な生活を営める社会の実現をめざし、次の事項に全力で取り組むことを決議する。

 

一、診療報酬・介護報酬を引き上げ、不合理の是正を行うこと。
一、安全に医療を提供するため、医療従事者の労働環境の改善を図ること。
一、保険医の人権と裁量権を尊重し、保険診療の制限や萎縮を強いる審査、指導、監査を行わないこと。
一、 国庫負担を増額し、応能原則による負担などによって患者の窓口負担を大幅に軽減し、新たな患者負担増を行わないこと。
一、保険でより良い歯科医療を実現するため、歯科医療費の総枠拡大を行い、歯科技工士や歯科衛生士等の歯科医療従事者の待遇改善を図ること。
一、世界標準のワクチンを希望するすべての人たちに、無料で安心してワクチンが接種できる体制を構築すること。
一、 10月からの消費税率10%への引き上げを中止し、医療にはゼロ税率を適用すること。
一、自然災害で被災したすべての住民や医療機関・介護福祉施設の再建のために、公的支援を拡充すること。
一、 原発再稼働をやめ原発ゼロをめざし、再生可能エネルギー中心の政策に転換すること。
一、憲法9条・25条などの日本国憲法を遵守すること。
一、唯一の戦争被爆国として核兵器禁止条約を批准すること。

2019.04.18 HPVワクチン問題に関する名誉毀損訴訟一審判決結果に関する見解について ~判決内容とワクチンの有効性・安全性はまったく関係ない~

3月26日、東京地裁で元信州大医学部長の池田修一氏がHPVワクチン接種後の健康影響を調べる研究内容の寄稿について、医師でジャーナリストの村中璃子氏らを名誉毀損で訴えた裁判の判決が行われた。裁判官は「被告らが十分な裏付け取材もせずに、繰り返し原告の行為を『捏造』と記載した影響は甚大」とし、原告の訴えを全面的に認め、330万円の賠償金の支払い等の判決を言い渡した。裁判では「子宮頸がんワクチンを打っていないマウス1匹」の実験結果をもって、「N=1とは知らなかった」、「捏造ではなく他の研究者の実験結果の引用」などとする原告の言い訳を受け入れ、公共性・公益性と科学を加味しない判決が下され、非常に残念な結果となった。
 また、科学の問題を名誉棄損にすり替えた裁判であり、当会の医師・歯科医師はこのような科学を否定するような行為を容認することはできない。理事会として判決の結果と子宮頸がんワクチンの有効性・安全性とはまったく関係ないことを宣言する。
 この裁判の経過として、池田修一信州大学元教授が2016年3月16日TBS「NEWS23」で、「子宮頸がんワクチンを打ったマウスだけに脳に異常な抗体が沈着して、海馬の機能を障害していそうだ」、「明らかに脳に障害が起こっている。ワクチンを打った後、こういう脳障害を訴えている患者の共通した客観的所見が提示できている」と説明する映像が全国放送されたことに起因する。
 この放送を観た視聴者はHPVワクチンの示された副反応に憤り、その後の接種行動にも大きな影響を与えることとなる。積極的勧奨の差し控えから5年が経過し、一時期70%近い接種率を誇ったが、今や定期接種にもかかわらず、接種率は1%という事態となっており、WHOも政府に接種を強く推奨している。
 前段のTBSの放送に対し、医師でジャーナリストの村中璃子氏が月刊「Wedge」に「子宮頸がんワクチン薬害研究班 崩れる根拠、暴かれた捏造」と題した記事を寄稿し、同研究発表の杜撰さを指摘し、国民に大きな反響を呼んだ。しかし、その後池田氏は学会や論文など科学の場での反論を行わず、突然、名誉毀損として、司法の場にHPV問題を持ち込んだ。
 信州大学の調査結果では、実験が予備的なものであることを知りながら断定的な発表を行い、世間に大いなる誤解を与えた事実に関する責任は重いとして池田氏に猛省を促し、再現実験と発表の修正を求めている。しかし、2年以上たっても再現実験の報告も、発表の修正の報告も出されていない。また、厚労省は「池田氏の不適切な発表により、国民に対して誤解を招く事態となった」、「池田班の研究結果では、HPVワクチン接種後に生じた症状がHPVワクチンによって生じたかどうかについては何も証明されていない」と異例の見解を公表している。
 千葉県保険医協会は科学的な立場、医学的な立場でワクチンの有用性を評価し、広く接種を促し、VPDを防ぐことは公衆衛生の基本であると考える。政府にはHPVワクチンの「積極的勧奨の差し控え」を撤回し、接種率が上がるよう一日も早い対策をするよう望む。

 

以上

2019.02.21 【理事会声明】消費税の10%増税の中止と「損税」問題の解決のために「ゼロ税率」導入を求める

政府は「10%増税中止」の決断を

政府は、最終的な判断を留保しつつも、10月からの消費税10%を実施する方針を示している。昨年12月に公表された「2019年与党税制改正大綱(以下、大綱)」では、自動車、住宅に関する税制上の支援策などが盛り込まれ、消費税増税に向けあらゆる経済対策を実行するとしている。
 しかし、日常生活に目を向ければ、複数税率や「景気対策」と称する複雑な仕組みの導入により、消費者と事業者、とりわけ地域の中小の事業者に不安や懸念も広がっている。現在、貧困と格差が拡大し、国民の賃金、消費は相変わらず低迷している。このような経済情勢での消費税増税は、さらなる負担を生じさせることは必定だ。
 個別医療機関の経営や地域の医療提供体制、さらに国民生活と地域経済に多大な困難と混乱をもたらすことは必至である。医療に係る消費税の問題が依然として解決がなされない中、当会は、「消費税増税中止」の決断を、政府に求めるものである。

 

消費税負担額概算調査等の現場の声は、ゼロ税率の適用が急務

大綱では、医療にかかる消費税のあり方について、「診療報酬の配点方法を精緻化する」とし、従来の診療報酬で補填する対応が踏襲された。医療機関の控除対象外消費税(損税)問題は、「抜本的な解決」とは言い難い。
 協会・保団連が昨年実施した消費税負担額概算調査では、1医療機関の保険収入に対する消費税負担の割合は、医科有床診4・01%、医科無床診2・79%、歯科2・31%となっていることが明らかになった。また、個々の医療機関の消費税負担額や保険診療に占める負担割合には、ばらつきがあることがわかった。
 協会・保団連は、保険診療報酬などを課税対象にして消費税率を0%で計算し免除する「ゼロ税率」の導入を提言する。これにより損税は確定申告時に控除することで対応できる(控除しきれない場合は個別に還付申告が必要である)ように手続きが煩雑化しない。現状の診療報酬による対応は実質的に患者に消費税負担を課しており、法の理念である「特別の政策的配慮に基づくもの」の主旨に反するものである。
 これからの運動は、野党を中心に消費税ゼロ税率に対する理解が広まっていることを力に、統一地方選挙や参議院議員選挙を控え、議員が公約に盛り込み選挙の争点とさせるよう取り組んでいく。

2019.03.01 【会長声明】沖縄県民投票の結果を尊重し、辺野古埋め立て即時中止、新基地建設の撤回を

私たち千葉県保険医協会は、国民の命と健康を守る医師、歯科医師として、国民の生活と安心を脅かす政治を許さず、平和と民主主義を守る立場から保険医運動に取り組んでいます。
 2月24日、辺野古埋め立ての賛否を問う沖縄県民投票において、有権者の過半数が投票し、埋め立て反対が43万人を超え、投票総数の72%と7割を突破しました。また、全有権者の4分の1を大きく超え、今回の埋め立て反対票は、昨年9月の沖縄県知事選で玉城デニー知事が獲得した約39万票も上回る結果となりました。今回の選挙で県民の意思があらためて明確となり、沖縄県民の民意が辺野古への米軍新基地建設反対であることを示しています。
 これまでの沖縄・辺野古への基地建設強行は、たびたび明らかにされてきた沖縄県民の民意を無視するものです。地方自治をも踏みにじる憲法無視の暴挙は、日本の民主主義にとっても大きな禍根を残すものであると考えます。
 日本政府は、県民投票で明確に示されたこの民意に従って、辺野古への新基地建設工事を直ちに中止し、計画を撤回し、普天間基地の即時運用停止と閉鎖・撤去を米国政府に求めることを強く要求します。

2019.01.22 予防接種法施行令の一部を改正する政令(案)等について

当会は、ワクチンで防げる病気(VPD: Vaccine Preventable Diseases)で日本国民が生命や健康を脅かされている現状を鑑み、2020 年度末までにMRワクチンの接種率をあげ、確実に風しんの排除と先天性風しん症候群の防止を実現するために、啓発活動や関係機関に要請等を行っています。国立感染症研究所発表では2019 年1 月13 日までの風しん患者累積報告数は3,056 人となり、今も全国へ流行が広がっています。今般、風しん流行への新たな対策として予防接種法施行令の一部を改正する政省令(案)が出され、そこで下記の7 点の意見を提案します。

 

①風しんの第5 期予防接種の対象を昭和37 年4 月2 日から昭和54 年4 月1 日の間に生まれた男性としているが、この対象以外にも1 回接種のみの男性及び接種漏れの女性に対しての接種とするなど、抗体価が低い対象が存在し感染源となっている。免疫を獲得することがより確実(約99%)とするために、接種対象は男女問わず幅広く設定すること。

②施行期日は公布の日となっているが、実施にあたっては自治体への情報提供は迅速におこなうこと。また、2019 年度の無料接種化とした場合、2019年1 月~ 3 月まで間に接種控えが起きないよう、積極的勧奨を行うと共に、この間抗体検査や予防接種をされた方への償還申請等の対策を講じること。

③「風しんに関する特定感染症予防指針」平成26 年3 月28 日(平成29 年12 月21 日一部改正・平成30 年1 月1 日適用)に基づき、ワクチンの増産や接種計画を立て、ワクチンが充足した際には抗体価を前提としないワクチン接種体制を構築すること。

④厚生労働省が平成26 年2 月発出の「予防接種が推奨される風しん抗体価」によると、HI 法8 倍・16 法倍の対象者について「過去の感染や予防接種により風しんの免疫はあるが、風しんの感染予防には不十分である。そのため、感染によりお腹の赤ちゃんなどへ影響が生じる可能性がある」とし、予防接種を推奨している。また、HI 法32 倍以上の場合「風しんの感染予防に十分な免疫を保有していると考えられ、風しん含有ワクチンの接種は、基本的に必要ない」となっている。風しん排除を速やかに行うためにも、男女ともに最低でも抗体価はHI 法で16 倍以上保有すること。

⑤職域では年一回の定期健診に抗体価検査項目を設定し、低抗体価の人を確 実にワクチン接種につなげられるよう、職域での産業医と開業医、関係機関のネットワークを構築すること。また、特定健診でスクリーニングを行う場合は、自治体担当者、対象住民への周知が進むよう保健センターや地域包括支援センター等を活用し、地域に密着した啓発を行うこと。尚、それぞれに係る関係職種に対し、風しん排除に向けた抗体価検査とワクチン接種の必要性を伝えるリーフレットを作成し連携を強めること。

⑥施行後、風しん抗体価前提によるワクチンの接種が進まない場合は、速やかに制度の見直しを行い、確実にワクチン接種につなげるようにすること。

⑦この間、風しんのみならず麻しんの流行も各地で発生している。政令(案)のワクチンでは単身ワクチン又は麻しん風しん混合ワクチンの選択となっている。そこで、麻しん風しん共に予防することができる「麻しん風しん混合ワクチン」の方を増産し、接種を推進すること。

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