千葉県保険医協会

声明・主張・談話

2023.11.30 【声明】イスラエルとハマスは即時停戦し、ガザ地区へ人道支援を

【声明】

2023年11月27日

千葉県保険医協会

会   長    岡野  久

平和環境対策部長 野崎 泰夫

 

イスラエルとハマスは即時停戦し、ガザ地区へ人道支援を

 

10月7日、パレスチナのイスラム組織「ハマス」によるイスラエルへの大規模な攻撃が始まり、それに対するイスラエルによる報復攻撃によって、地中海東岸のガザ地区では多数の市民に死傷者が出ており、建物などの破壊も著しい状況となっている。ガザ地区最大の病院であるアル・シファ病院では、燃料や物資不足で必要とされる治療を受けられない状況が続いていると伝えられている。国連のグテーレス事務総長は「ガザ地区は子供たちの墓場になりつつある」と表明するなど、その状況は深刻さを増すばかりである。

これまでに、多くの一般市民や子どもたちが犠牲になり、多数の医療機関も攻撃を受け必要とされる医療を提供することができない機能不全に陥っている。軍隊が民間人を殺傷し、医療機関を破壊することは国際人道法上、許されるべきことではない。加えて、多数の人質をとっていることも決して許されることではない。ようやく、11月22日に「戦闘を4日間、一時的に休止」するとの報道がなされたが、まさに”一時的”なものにすぎず、根本的な解決には程遠い状況であることは論を待たない。

イスラエルとハマスの大規模衝突に関して10月27日、国連総会は双方に対し「敵対行為の停止につながる即時かつ持続的な人道的休戦」を求める決議を121ヵ国の賛成多数で採択した。しかし、この決議に対し14ヵ国(イスラエルや米国など)が反対、日本政府は棄権した。不戦の誓いともいうべき日本国憲法第9条を持つ日本政府が棄権したことに、言いようのない怒りを覚えるものである。9条は「正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」と高らかに謳っている。憲法に9条の条文を有する日本政府は、こうした非人道的な戦闘行為の終結に向けて、国際社会の中で一層の役割を発揮すべきと考えるものである。

私たち医師・歯科医師は、人々の生命と健康を守っていくため、日々診療を行っている。生命と健康が著しく損なわれている現状から一刻も早く脱却するために、全ての戦闘行為を即時停止し、病院などが破壊されているガザ地区に対する人道支援を強力に求めるものである。

以上

2023.11.07 「GX脱炭素電源法(束ね法案)」の強行可決に抗議する

2023年6月15日

 

「GX脱炭素電源法(束ね法案)」の強行可決に抗議する

 

千葉県保険医協会

会長 岡野久

 

 5月31日、60年を超える原発の運転期間延長を認めることなどを内容とする「GX脱炭素電源法案」(原子力基本法、原子炉等規制法、電気事業法、再処理法・再エネ特措法改定案の5つの束ね法案)が、可決・成立した。

 同法によって、これまで「原則40年、最長60年」とされた原発運転期間の制限を、運転停止期間等を60年に上乗せして運転できることとし事実上廃止、経年劣化している原子炉の長期運転が可能になった。また、その運転期間の制限条項をこれまでの「原子炉等規制法」から「電気事業法」に移管された。

 2011年の未曽有の福島第一原発事故は、原子力発電所の安全神話が根底から崩れた。そのため政府は、「東京電力福島第一原子力発電所事故の教訓を踏まえ、原子力規制行政に対する信頼の確保に向けた取組を継続的に行っていく」「原発依存度については、省エネルギー・再生可能エネルギーの導入などにより、可能な限り低減させる」として、原子力規制行政の見直しや、原子力によらないエネルギー政策の構築を掲げてきたはずである。今回の改正法は、福島第一原発の教訓を踏みにじり、原子力発電事業推進への回帰という大きな転換がみられ、見過ごすことができない内容となっている。

 加えて、原子力基本法に「国は、エネルギーとしての原子力利用に当たっては、原子力発電を電源の選択肢の一つとして活用することによる電気の安定供給の確保、我が国における脱炭素社会の実現に向けた発電事業における非化石エネルギー源の利用の促進及びエネルギーの供給に係る自律性の向上に資することができるよう、必要な措置を講ずる責務を有する」と規定され、原発活用によって電力安定供給や脱炭素社会を実現することが「国の責務」と明記された。今日「国の責務」と言うのであれば、既存の原子力発電所の徹底した規制と安全性確保、再生可能エネルギーを主体としたエネルギー政策の転換こそが、「国の責務」ではないだろうか。

 この他にも、高レベル放射性廃棄物の最終処分方法が未確立の上、その保管・貯蔵量が限界に達しようとする中、今後の方向性が示されていないことや、福島第一原発の廃炉への方向性も見えず、被災者・避難者への補償が不十分なままであることなどを指摘せざるを得ない。

 我々は、政府に対して、福島第一原発事故によって得られた教訓に立ち返り、本改正法を廃止し、脱原子力発電、再生可能エネルギーへの転換を図ることを求めるものである。また、いのちと健康を守る医師・歯科医師として、広範な国民との協力・共同の力で、政府のエネルギー政策の転換をめざし運動していくことを表明する。

以上

2023.11.07 第52回定期総会・決議

 政府が今国会に提出していた健康保険証廃止を含むマイナンバー法等改正法案は6月2日、参議院本会議において自民・公明・維新・国民の賛成多数で可決された。これによって、来年秋に現行の健康保険証を廃止し、本来任意取得であるマイナンバーカードと健康保険証を一体化した「マイナ保険証」を実質義務化することになった。皆保険制度を崩壊させ、多くの国民を医療から遠ざけるとともに、情報漏洩の不安を感じさせる愚策と言わざるを得ない。
 当会の調査ではカードリーダーを導入している8割の会員のうち、6割でオンライン資格確認ができない等の「トラブルがあった」と回答をしている。現場では初診で「マイナ保険証」による資格確認ができなかった場合、やむを得ず窓口で10 割負担した事例や、手持ちがなく、受診を諦めた事例もみられた。来年秋以降、健康保険証が廃止となった場合には、その場で資格が確認できず、命にかかわる問題が多発する事態が予想される。現行の保険証を存続させることが必要である。
 一方、新型コロナウイルス感染症発生から3年以上が経過し、5月8日から「5類感染症」に移行することになった。政府はこれで一区切りをつけた形であるが、新型コロナ感染症が撲滅されたわけではなく、予断を許さない状況である。当会はパンデミック発生時から現在まで歴月で会員医療機関の経営実態調査を行っているが、直近の調査結果をみても回答した4割の会員が未だに受診抑制による患者減が続き、コロナ前には回復していないと回答している。長く続くコロナ禍による診療の疲弊に加えて、円安や相次ぐ物価、人件費高騰で医療機関の経営は厳しく、閉院・廃業を決意せざるを得ない状況がみられる。それらを打開するためにも診療報酬の今期中の再改定に加え、次期改定も大幅な引き上げを強く要求する。
 最後に、社会保障が抑制され続ける一方で、軍拡路線が展開されていることは看過し難い。私たちは命を守り平和を願う医師・歯科医師の団体として、軍拡路線に強く反対する。また、国連「核兵器禁止条約」の発効に賛同し、今後も核兵器廃絶に向けた努力を続けていく所存である。  
 私たちは第52 回定期総会にあたり、今年度も国民皆保険を守り、すべての国民が尊厳を保って幸せに暮らせる社会の実現を目指し、次の事項に全力で取り組むことを決議する。



一、 診療報酬の今期中の再改定に加えて、2024 年4月改定の大幅引き上げと不合理是正を行うこと
一、 健康保険証の廃止を撤回するとともに、オンライン資格確認、レセプトオンライン請求の実質義務化を撤回すること
一、 保険でより良い歯科医療を実現するため、歯科医療費の総枠拡大を行い、歯科技工士や歯科衛生士等の歯科医療従事者の待遇改善を図ること
一、 安全に医療を提供するため、医療従事者の労働環境の改善を図ること
一、 国庫負担を増やし、過重な保険料負担や窓口一部負担を大幅に軽減し、新たな患者負担増を行わないこと
一、 審査、指導、監査については保険医の人権と裁量権を尊重すること
一、 感染症、災害、救急、周産期、小児、難病、障害者等の行政的医療が維持できなくなる組織改革はやめ、公立、公的病院の拡充等の支援を行うこと
一、 地域環境の変化による新興、再興感染症に対する体制を充実すること
一、 世界標準のワクチンを希望するすべての人たちに、無料で安心して接種できる体制を構築すること
一、 消費税損税となっている保険医療にゼロ税率を適用すること
一、原発ゼロをめざし、再生可能エネルギー中心の政策に転換すること
一、唯一の戦争被爆国として核兵器禁止条約を批准すること
一、憲法9 条、25 条などを有する日本国憲法を遵守すること

2023.04.26 「保険証廃止法案」の衆議院特別委員会採決にあたり、協会は会長声明を発表しました。

2023年4月25日

【抗議声明】

千葉県保険医協会

会 長  岡野 久

 

「保険証廃止法案」衆議院特別委員会採決に抗議します

現行の健康保険証を存続せよ

 

4月25日、衆議院の「地域活性化・こども政策・デジタル社会形成に関する特別委員会」において健康保険証を廃止し、マイナンバーカードと一本化することを含む「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律等の一部を改正する法律案(マイナンバー法等一部「改正」法案)」が採決された。法案審議は4月18 日に始まったばかりで、実質的な審議時間は参考人質疑も含めてわずか13時間である。短時間の審議の中でも、健康保険証廃止によって無保険者が発生してしまうこと、医療や介護の現場での混乱など、多くの問題点が指摘され、健康保険証の廃止に道理は無いことが明らかとなっている。しかし、政府は国民の不安な声、医療や介護現場からの懸念に正面から答えていない。

「保険証廃止」は皆保険制度を揺るがす甚大な事態に

我が国は国民皆保険制度により、1枚の保険証さえあれば、いつでも、誰でも、どこでも、安心して必要な医療を受けることができる。保険者はすべての国民(被保険者)に健康保険証を発行し、交付することは公的医療保険制度の大前提となっており、法令上も保険者には被保険者証の発行が義務付けられている。しかし、政府は来年秋からは健康保険証を廃止し、保険者の「発行、交付」義務を国民による「申請主義」へ転換させる制度改悪となっている。これは国民皆保険制度の根幹を大きく揺るがすものであり、国民の多くが安心して必要な医療が受けられない甚大な不利益を被る事態に繋がることが必至である。

保団連・協会で取り組んでいる「保険証廃止反対」の緊急オンライン署名は短期間で8万筆にのぼり、「マイナンバーカードは強制でなく任意なのだから従来の紙の保険証を利用するかも、国民が選択できなければ道理に合わない」、「保険証の廃止は今まで築いてきた国民皆保険制度を崩すもの。強制してやめさせるのはおかしい」など、反対、不安、懸念の声は広がるばかりである。

高齢者施設の94%が「利用者・入所者のマイナンバーカードを管理できない」

さらに、健康保険証の廃止ありきで、代理交付・申請補助や第三者によるカード管理を進めるとされているが、協力を求められる医療・介護現場には負担と責任が課せられ、人手不足にも拍車がかかる。当会が加盟する保団連で行った高齢者施設への影響調査では、特養など高齢者施設の94%が「利用者・入所者のマイナンバーカードを管理できない」と回答した。このまま健康保険証の廃止が強行されれば、利用者・入所者は医療へのアクセスに困難を抱えることになり現場は大混乱に陥ってしまう。

健康保険証廃止の矛盾は明らか、保険証は全員に交付を

医療や介護現場の混乱を防ぎ、安心して医療が受けられる皆保険制度を守るために、政府はこれまで同様に健康保険証は全員に交付した上で、マイナンバーカード利用を「任意」とすればよいだけのことである。改めて現行の健康保険証の存続を求めるとともに、マイナンバー法等一部「改正」法案は徹底審議の上、廃案とすることを強く求める。             以上

2023.03.22 医療DXの推進に関する工程表(骨子案)に関する御意見の募集について 提出先:内閣官房医療DX推進チーム

 協会は下記のように「医療DXの推進に関する工程表」についてのパブリックコメントを提出しました。会員の先生方でも自由に同コメントの提出が可能ですので、ご検討いただきますようお願いいたします。募集要項等は下記からご確認ください。締め切りは4月6日(木)になります。

医療DXの推進に関する工程表(骨子案)に関する御意見の募集について|e-Govパブリック・コメント

2023.03.22

医療DXの推進に関する工程表(骨子案)に関する御意見の募集について

提出先:内閣官房医療DX推進チーム

                              千葉県保険医協会

                               会 長 岡野 久

<基本的な考え方について>

  • 国民の更なる健康増進について保険医療データをPHRとしてより良い医療に生かす点については大いに賛同するところもあるが、もし国民一人一人の個人データが営利目的の保険会社等に使われ患者、国民に一方的な不利益をもたらす事があってはならないと考える。個人情報が漏洩せず、当該個人のコントロール権が守られている必要がある。
  • 医療情報という非常に繊細な情報の共有にはセキュリティを確保できることが求められる。国が充分な情報提供や費用支援を行う必要がある。経済的にも人的にも余裕のない医療機関では平時だけでなく、災害時等緊急時には対応出来ないためデジタルによって、すぐに医療連携や情報共有ができるわけではないことを十分理解して国が先導してほしい。
  • 現行のオンライン資格確認システムやそれ以前のコード化問題で医療現場の業務は非常に煩雑になってきており、到底効率化とは言えない真逆の状況となっている。医療現場がどうしたら円滑に業務が遂行できるかを熟知せずにデジタル化のみ進めても全く意味が無い。
  • 複雑なITシステムに対応するにはITスキルに強い人材を余分に雇う必要があるので費用増になる。その視点で考えると運営コスト軽減に結びつくと結論付けるのには無理がある。
  • 医療情報の二次利用の環境整備について営利団体であるヘルスケア産業が医療情報を提供するには、国民の合意が必要ではないか。例えば個人情報を生命保険会社等に知られて、本人が不利益を被る可能性がある。個人情報保護法にも抵触する問題である。

 

<具体的な施策及び到達点について>

(1)マイナンバーカードと健康保険証の一体化の加速について、任意取得であるマイナンバーカードに健康保険証を一体化することについては、国民的理解と合意が得られていない。オンライン資格確認体制を義務化することでマイナンバーカード取得も事実上「義務化」となる点には矛盾が生じている。この点について国会審議や国民に説明もなく、義務化を強要するのは問題である。紙ベースの健康保険証廃止も国民に説明し議論を経る必要がある。現行の健康保険証で問題なく進められてきた医療界にとって紙の保険証が無くなれば災害時、停電時等にどう資格確認を行うのか。現にマイナンバーカードによるオンライン資格確認システムを導入している医療機関の4割で資格確認が出来ないトラブルが発生している。その点でも現行の健康保険証による医療受診に代えて、マイナンバーカードによる受診へのシステム変更に踏み切ることは拙速である。マイナンバーカード取得困難者等社会的弱者に対する視点が欠落している。これらの人々を切り捨てる差別社会になりかねない。システム変更が強行された場合医療崩壊から医療壊滅にまで進んでしまうのではないか。このことは患者国民の命を危険に晒す行為ではないのか。

(2)全国医療情報プラットフォームの構築

①共有可能な医療情報の範囲の拡大、電子カルテ情報の標準化等医療情報の共有がより良い医療遂行にとって必要になる事は充分理解できるが、医療現場の負担にならない方法で遂行してほしい。また、医療情報は非常に繊細な情報であり、誰でもいつでも見て良いというものではない。必要性の高いと思われる人が必要な時にだけ見られるという規制がなければいけない。情報共有する以前に、個人情報の在り方が厳格に示され、現場の状況に合わせ責任もった体制づくりをすすめるべきである。

②自治体、介護業者等とも必要な情報を安全に共有出来る仕組みの構築および個人情報を如何に守り共有して使えるかが重要である。前述した様に必要な情報を提供し人的にも費用的にもセキュリティ等を確保する為の支援をすべきである。

(3)診療報酬改定DX

  診療報酬改定点数表におけるルールの簡素化・明確化とあるがこれはデジタル化と関係はない。デジタル化に関わらず達成しているべきことであり、マイナンバーカードの有無により患者窓口負担に差が出るのは差別であり、診療報酬で格差をつける点数は撤廃すべきである。ただし、オンライン資格確認システムの導入により医療機関の経費が増えることに対し、診療報酬ではない補助金等による財政支援を行うべきである。

(4)医療DXの実施主体

国が医療DXありきで医療現場や国民の同意なく強引に進めていくべきではない。より良い医療を提供しやすくなる為にデジタル化する発想でなければならない。患者・国民に利益をもたらす「デジタル化」でなければならないと考えている。

 

                                    以上

2022.11.15 2023年4月実施オンライン資格確認システム 導入の原則義務化「撤回」とシステム運用の 検証結果公表及び公聴会開催を要求する

 当会は千葉県内開業医保険医医科・歯科会員4230 名で組織している団体で、9 月下旬に一斉に会員を対象にFAX で「オンライン資格確認システムの導入状況」と、既に運用している会員には「システムの現状」を伺うアンケート調査を実施し、471 件回答があった。

オンライン資格確認システム導入の義務化を「撤回」し、療養担当規則改正を調査結果では、マイナンバーカードによるオンライン資格確認システムは58.8 % の会員割が導入していないと回答。実施している医療機関は僅か12.3 % であった。厚労省が掲げた9 月末に全体の5 割の導入を目指す目標にも及んでおらず、2023 年3 月末には9 割超の目標達成は不可能で、来年4 月の「義務化」は撤回し、療養担当規則を改正すべきである。

 また、アンケートで導入への懸念を聞いたところ「レセコンや電子力ルテ等の改修で多額の費用がかかる」、「導入補助金が少ない」が62.2 %、「保険証の廃止」59.4 %、「情報漏洩や拡大、セキュリティ対策が不安」が58.0 %、と続き、回答した医療機関の多くは電子媒体 ( 光ディスク) で請求するなど、オンライン化には建物の改修が必要となる事例が多くみられた。一方、オンライン化の体制確保が可能な医療機関であっても、ランサムウェアによる情報漏洩を懸念し、セキュリティ対策が不十分であるため、導入を見合せるところもあった。

システム運用のトラブル検証結果の公表と公聴会等の開催を既に運用を開始している12.3 % の会員に「トラブルの有無」を聞いたところ、約半数 (47.6 % ) の医療機関で機器のトラブルが発生し、医療現場では患者さんの診察に支障を来していると回答。今後、義務化した場合にはトラブルは更に増えることになり、資格確認ができない場合には、患者さんから10 割自己負担を求める事態にもなり、受療権の侵害にもあたる看過できない事態が予測される。まずは、政府は実施している医療機関からエラーやトラブルなど、多くの問題点を集約、検証、解決を図る等、体制整備が前提であると考える。

 当会は① 12 月開催の中医協ではシステム運用の検証結果を公表すること、②公聴会の開催やパプリックコメント募集など行うこと、③ 2023 年4 月からのオンライン資格確認システム導入「義務化」を撤回し、療養担当規則を改正すること。④保険証廃止の方針の「撤回」を強く要望する。

2022.09.06 オンライン資格確認システムの強行な義務化導入に抗議し、 保険証の原則廃止方針の撤回を求める

厚生労働大臣 加藤 勝信 殿

 

 8月10日の中医協総会は患者によるマイナンバーカードの健康保険証利用(以下、マイナ保険証)促進のため、療養担当規則を改正し、2023年4月からオンライン資格確認の「原則義務化」を明記し、これに伴う診療報酬上の加算(医療情報・システム基盤整備体制充実加算)を答申。9月5日に療養担当規則の改定を告示した。

今回の10月からの診療報酬の見直しでは、通常の保険証の場合は初診時に4点加算、マイナ保険証の場合は2点加算となった。持参する保険証によって診療報酬の格差を設けることは国民の受療権を侵害するものである。また今年4月に実施された加算を期中で改定することで医療現場には混乱が生じ、患者の意思はでなく受診する医療機関の体制によって自己負担が増えることも断じて容認できない。ましてやオンライン資格確認の導入に多額の費用、維持費がかかるが、小手先の加算で到底対応できるものではない。

当会には、既にシステムを導入した会員から「資格確認ができない」「最新の情報になっていない」等の相談が相次いでおり、厚労省は過誤請求や手入力による手間等の事務コストの削減を謳うが過誤請求は全く解消されず、むしろ事務負担が増えている有様である。

骨太の方針2022ではオンライン資格確認の原則義務化と保険証の原則廃止を目指す方針が示された。現行の保険証による資格確認は国民に定着し、患者・医療機関側も何ら不便を感じていない。マイナンバーカードの取得も「任意」であり、国民に浸透しているとは言えない。マイナ保険証による受診を患者に強要することは、マイナンバーカードの取得義務化にも繋がり、先の「任意」と矛盾する。患者や医療現場の声を無視し、重大な事案を閣議決定に基づき推進することは手続き上でも違法であり、断固許されない暴挙である。

海外では個人番号制の国もあるが、情報漏洩や紛失などのリスク、セキュリティ体制には厳しい監視体制や罰則もあり、個人情報へのコントロール権が担保されている。しかし、日本ではこのような前提がないまま義務化を強行しようとしている。現在のオンライン資格確認導入の進捗は診療所で2割、2023年3月時点で6割前後とされ、同年4月の義務化には間に合わない。また、オンライン請求回線の導入とあるが、これは実質的なレセプトオンライン請求の義務化である。国は導入効果として資格喪失後の返戻減少を挙げるが、それは全体の0.27%に過ぎず、診療所は事務負担の強要だけでなく、導入や維持等に多額な費用負担が発生し、メリットは少ない。

様々な問題があることが明らかになる中で、厚労省は導入していない医療機関に対し、基金等からの架電、IDやパスワードの簡易書留による通知を行うなど多額の税金をかけてシステム導入を強引に推し進めようとしている。また、マイナンバーカード取得推進のためにマイナポイント付与に1.8兆円もの費用を投じている。コロナ禍による患者減で経営難に喘ぐ医療機関でオンライン資格確認義務化に対応できない事例が発生し、廃業せざるを得ない状況も予測される。当会は今回の拙速かつ強行なオンライン資格確認導入の義務化と保険証の原則廃止方針の撤回を強く要求する。

2022.06.19 第51回千葉県保険医協会定期総会決議

 わが国が新型コロナウイルス感染症のパンデミックに見舞われ、2 年半が経とうとしている。昨年の今頃は感染防止に欠かせないマスクや防護具が枯渇し、多くの開業医は手作りのビニールガウン等で自身を覆い、必死に診察する姿があった。今年に入り、世界的にはワクチン接種が加速度的に進み、新たな局面を迎える中で、わが国のワクチン供給は周回遅れとなり、すべての国民へのワクチン接種が滞り、未だに生活に不安を抱き不自由な生活を強いられながら、新型コロナウイルスと対峙している。

  現在、第7波感染拡大で収束の兆しが見えない中でも、岸田政権は「新自由主義」路線を継続し、経済最優先、医療、社会保障を蔑ろにする政策を踏襲している。「75 歳以上の窓口負担2割化」についても本年10 月実施を強行する予定である。多くの高齢者が感染を恐れ、受診控えや定期的な健診の遅れも増える中で、医療費の負担増により更に受診を手控えることは、一層の健康悪化につながるものである。また地域医療を担う開業医の経営もコロナによる受診抑制により逼迫し、回復の見通しが立たず閉院を決断せざるを得ない状況も散見され、医療機関への経済的な支援は喫緊の課題である。

  更に私たちは命を守り平和を願う医師・歯科医師の団体として、国連「核兵器禁止条約」の発効に賛同し、今後も核兵器廃絶に向けて努力を続けていく所存である。

  我々は第51 回定期総会にあたり、今年度も国民皆保険を守り、すべての国民が尊厳を保って幸せに暮らせる社会の実現を目指し、次の事項に全力で取り組むことを決議する。

一、 10%以上の診療報酬(特に基本診療料)引き上げと不合理是正を行い、同時に介護報酬の引き上げも行うこと

一、 保険でより良い歯科医療を実現するため、歯科医療費の総枠拡大を行い、歯科技工士や歯科衛生士等の歯科医療従事者の待遇改善を図ること

一、 金銀パラジウムの逆ザヤを生まない制度にすること。

一、 安全に医療を提供するため、医療従事者の労働環境の改善を図ること

一、 国庫負担を増やし、過重な保険料負担や窓口一部負担を大幅に軽減し、新たな患者負担増を行わないこと

一、 審査、指導、監査については保険医の人権と裁量権を尊重すること

一、 感染症、災害、救急、周産期、小児、難病、障害者等の行政的医療を維持できなくなる組織改革はやめ、公立、公的病院の拡充等の支援を行うこと

一、 地域環境の変化による新興、再興感染症に対する体制を充実すること

一、 世界標準のワクチンを希望するすべての人たちに、無料で安心して接種できる体制(日本版CDC、ACIP)を構築すること

一、 消費税損税となっている保険医療にゼロ税率を適用すること

一、原発ゼロをめざし、再生可能エネルギー中心の政策に転換すること

一、唯一の戦争被爆国として核兵器禁止条約を批准すること

一、憲法9 条、25 条などを有する日本国憲法を遵守すること

2022 年6 月19 日

千葉県保険医協会第51 回定期総会

2022.06.08 マイナンバーカードの保険証利用等に係る システム導入の義務化に強く反対する

内閣総理大臣 岸田 文雄 殿
厚生労働大臣 後藤 茂之 殿
総務大臣   金子 恭之 殿
デジタル大臣 牧島 かれん 殿

 

厚生労働省は5月25日に開催された社会保障審議会医療保険部会において、2023年4月から保険医療機関でオンライン資格確認のシステム導入義務化と、2024年度中を目途に保険者による保険証発行の選択制の導入、保険証の原則廃止を目指す方向で検討を開始した。「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太の方針)においても同様の方針が示され、マイナンバーカードの保険証利用のペースを上げるため国は強制的な手法を取ろうとしている。
 国民皆保険の日本では、医療へのアクセスと健康保険へのアクセスは実質的に同一である。保険証が原則廃止ともなれば、マイナンバーカードを持たない者は、健康保険による診療が受けられなくなるので、保険診療を受けたい場合マイナンバーカードを取得せざるを得ない。これはマイナンバーカード取得の実質義務化である。マイナンバーカード取得は法律上任意とされているので、明らかに法律に抵触するのみならず、マイナンバーカード取得を医療へのアクセス条件にすることは、憲法25条で規定された生存権を脅かすもので容認できない。またマイナンバーカードの保険証利用により、マイナポータルに集積された診療情報の閲覧が可能になる。しかし近年、ランサムウエア感染をはじめとするサイバー攻撃のリスクは格段に上がっている。患者の医療情報の漏洩リスクなどプライバシー侵害の問題が何ら解決されていない。
 オンライン資格確認は導入コストのみならず、一定のランニングコストを医療機関が負担する。これらの財源を手当てせずに、国が一方的な「義務化」を強要することは、過去にレセプトのオンライン請求を「義務化」しようとして、医療現場に大混乱を招き失敗した歴史から何も学んでいないと指摘せざるを得ない。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対応で疲弊した医療現場に、オンライン資格確認システム導入の義務化を押し付けるのは現場無視も甚だしいと言える。
 患者・国民の命と健康を守る医師・歯科医師の団体として、政府・厚労省に対して、医療機関におけるマイナ受付等に係るシステム導入の義務化、保険者における保険証発行の選択制導入や保険証の原則廃止などについて中止・撤回することを強く求めるものである。

2021.11.13 HPVワクチン積極的勧奨「再開」の決定を歓迎する ~子宮頸がんからすべての女性の命と健康をまもるために~

千葉県保険医協会はこれまで「ワクチンで防げる病気からすべての人を守る」ために、世界標準のワクチンを費用負担なく、無料で安心接種できる環境を求めて、患者会の皆さんと一緒に定期接種化を求める活動を推進してきました。
そうした中、昨日11月12日開催の厚生科学審議会(予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会)において、ついに「HPVワクチンの積極的勧奨再開」が決まりました。当会は2013年6月以降、8年以上にわたり差し控えられていたワクチン接種の積極的勧奨がようやく再開されることを歓迎します。これまで実現に向けて取り組まれた関係各位には心より感謝と敬意を表します。
今後は国、自治体に対し以下の点を強く求めます。
①8年間でHPVワクチンの接種機会を逃した対象者へのキャッチアップ接種(経過措置)の実施
②カバー率の高い9価ワクチンを適正な価格とし、速やかに定期接種へ切り替えること
③男子への接種に早急に取り組むこと。
④ワクチンの安全性と有効性について科学的な根拠に基づいて情報の提供を行うこと。
⑤医療機関と連携して接種後の健康被害を呈した方への治療や相談、支援体制を強化し、社会的な補償の充実も求められる課題となっています。

2021.09.29 感染症対策実施加算の継続等を強く求める

政府は、感染症対策に関する外来・入院時の特例加算を9月末で打ち切り、10月以降は補助金で対応する方針を示した。乳幼児への外来特例は点数を引き下げ半年延長する。多くの医療関係団体が加算継続を要望する中、特例措置を終了させたことに抗議するとともに、下記の通り診療報酬加算の継続を強く求める。新型コロナウイルスは、無症状でも感染力を有し、接触・飛沫対策に加え、エアロゾルへの対応が求められる。こうした特性を踏まえ、今年4月より感染拡大防止を図りつつ日常診療を継続するすべての医療機関等を対象に感染症対策実施加算が措置され、不十分ながらも感染対策への人的・物的経費を補う役割を果たしてきた。地域の医療機関は、変異を繰り返し、感染力を増す新型コロナウイルスと対峙し、心身ともに疲弊しながらクラスター発生等を防止してきた。新規感染者数は減少したものの、秋冬の第6波に向け、感染拡大防止対策の継続は必須であり、医療従事者の努力に報いるためにも加算継続は不可欠である。政府は、年末までの感染対策として、補助金(無床診療所8万円、病院・有床診療所10万円)を追加給付するとした。しかし、当面する感染対策の経費として不十分であり、これまで措置された補助金の執行も大幅に遅れている。迅速・簡便な診療報酬による対応の継続を強く求める。記一、外来等感染症対策実施加算、入院感染症対策実施加算を10月以降もそのまま継続すること。―、乳幼児感染予防策加算は引き下げず、継続すること。
さらに、歯科においては医科と同点数へ引き上げること。

2021.08.19 【会長談話】「黒い雨訴訟」上告断念を歓迎し、 被爆者全員の早急な救済を求める。

菅義偉首相は7月27日、広島県のいわゆる「黒い雨」訴訟の原告に対し、広島高裁の判決に上告しない旨の談話を発表し、上告期限の7月29日に原告勝訴の判決が確定した。
 黒い雨訴訟は原爆投下後に放射性物質を含んだ「黒い雨」を浴びて、健康被害が生じた広島県広島市や安芸太田市の住民84人が原告となり、「被爆者健康手帳の交付申請却下処分」の取り消しを求めた訴訟で、一審に続き、原告全員を被爆者と認め、被爆者健康手帳交付を命じる判決が7月14日に出ていた。
 この判決に対し、広島県と広島市は上告しない意向を示したが、国は「科学的な知見に基づいていない」、「被爆者援護法の枠組みを大きく壊すもので、看過できない」などとし、被告が上告しないと表明しているにも関わらず、補助的な立場で裁判に参加した国が上告を求めるという異例な状態であった。
 国が上告断念を迫られたのは高裁判決後、全国で判決支持の声が高まり、「黒い雨」による被爆者の長年に渡る願いと苦しみに国民が心を寄せたことである。
 一方で、談話は「今回の判決には過去の裁判例と整合しない点があるなど、重大な法律上の問題点があり、政府として本来は受け入れがたい」とし、判決で示された汚染した飲食物の摂取による「内部被曝」による健康被害も広く認めるべき、との指摘には「容認できるものではない」とした。
 菅首相は会見で「黒い雨」訴訟の原告と同様の被害者に対しても「訴訟への参加・不参加にかかわらず、認定し救済できるよう早急に検討する」と述べた。千葉県保険医協会は国の責任において救済するという姿勢を評価するとともに、今回、否定された「黒い雨」の援護対象区域の抜本的見直しや被爆者認定の枠組みを抜本的に改め、「黒い雨」により被爆したすべての人々の救済が早急に実現することを願うものである。

2021.06.17 【理事会声明】歯科医師による新型コロナワクチン接種は 法的な根拠を担保してから実施すべき

厚労省は4月26日付で事務連絡を出し、歯科医師による新型コロナワクチン接種のための筋肉内注射の実施について、法的な整理を示した。
 その事務連絡が発出されて以降、全国各地で実技研修が行われ、接種の迅速化の一手段として全国紙および各種メディアからの報道が続いている。歯科医師の間では少しでも社会に貢献できるのなら協力したいとの前向きな意見がある一方で、万一の医療事故に対する責任の所在や法的な根拠はどうなのか、と心配する声も聞かれている。
 歯科医師法第1条は歯科医師の任務を「公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もつて国民の健康な生活を確保する」と規定している。新型コロナウイルス感染症が国民の生命と健康を脅かす中で、その対策に参画することは歯科医師としての職業的使命でもあり、必要に応じて安全性を担保してのワクチン接種への協力を惜しむものではない。しかし、新型コロナワクチン接種の体制確保は、ワクチンの開発・供給を巡る動向の中で充分に想定しえた課題である。厚労省が、円滑に対応できるよう予め法律による対応に動かず、人材の逼迫が起こってから緊急避難的に解釈する対応をとったことには問題がある。
 事務連絡は、ワクチン接種のための筋肉内注射は医行為に該当し医師法第17条に違反するとした上で、3点の条件(①歯科医師の協力なしにはワクチン接種が実施できない、②歯科医師に筋肉内注射の経験があるか必要な研修を受けている、③被接種者の同意)を満たす場合、「公衆衛生上の観点からやむを得ないものとして、医師法第17条との関係では違法性が阻却され得るものと考えられる」とし、集団接種会場に限り、医師の監督下で歯科医師によるワクチン接種の筋肉内注射を可能とした。これは歯科医師によるPCR検査の検体採取についての法的整理と同じ手法でである。
 歯科医師による新型コロナワクチン接種については、PCR検査の検体採取以上に深刻なリスクを伴うことは明らかであり、検討には一層の慎重さが求められる。それにもかかわらずPCR検査の検体採取と同様に行政解釈により歯科医師の実施を可能とすることは不適切である。本来的には国会審議を通じて必要性と安全性について広く合意し、立法により適法性を確保した上で実施させるべきものであり、単なる事務連絡で済ませられるような話ではない。
医師法の定めを超えて歯科医師の協力が必要と判断するのであれば、責任を現場任せにして解釈と条件だけを示すのではなく、法律を根拠に実施できる条件を整えることが行政の責任である。ワクチンが必要な国民に円滑に行き渡るようにするとともに、これからも起こりうる緊急事態への対応に協力する歯科医師の法律上の位置づけを明確にするよう厚労省の責任ある対応を求める。

2021.05.13 75歳以上窓口負担2割化衆議院強行採決に抗議する ~新型コロナウイルス感染拡大の下、負担増をなぜ続けるのか~

5月11日、「75歳以上の医療費窓口負担2割化」などを内容とする健康保険法等の一部改正案が自民、公明、維新、国民民主の各党の賛成多数で採決・可決された。首都圏を中心に3度目の緊急事態宣言が出され未だに収束の兆しが見えない最中、コロナ対策を優先課題とし、それらの審議に注力する時期にもかかわらず、国民に更なる痛みを強いる「窓口負担2割化」法案をわずかな審議時間で採決を強行したことに対し、当会として政府に厳しく抗議する。
今後、審議の舞台は参議院に移ることになるが、今国会で徹底審議の上、廃案を求める。

 政府は衆議院審議において、政令で2割負担の対象とする単身世帯「年収200万円以上」(課税所得28万円以上)、夫婦世帯「年収320万円」(所得が多い方が同28万円以上)について「負担能力がある」と繰り返し答弁していたが、負担増による受診控えを見込んで給付費を年1,050億円も削減できると推計している。菅義偉首相は、受診控えの影響額も踏まえず「直ちに健康に影響しない」と無責任な答弁に終始したが、過去の負担増が平均寿命の押し下げにつながったという学識者の指摘もあり、抑制効果が大きく出ることも明らかになっている。
また田村憲久厚労相が「誰かが負担しなければならない」と居直る一方、参考人として意見陳述(4月20日)した日本福祉大学の二木立・名誉教授は「医療に受益者負担を適用すべきではない」として、税・保険料で「応能負担」を求めるべきだと強調した。負担増は大企業・富裕層にこそ求めるべきである。

 この間、私たちも取り組んだ「2割化反対」を求める国会請願署名は100万筆を超えた。コロナ感染症が依然猛威を奮い、日々の暮らしや健康への不安が高まっている中、さらに負担を押し付けることへの反対の声が高まっている。
いま政府、国会が全力を上げねばならないのは、国民の生活、生業の保障であり、病床や検査体制の確保、速やかなワクチン接種など医療提供体制を立て直すことであって、断じて「2割化」導入ではない。
私たちは、あらためて「2割化」に反対し、地域の患者・住民とともに成立阻止に向けた取り組みを進めていくことを表明する。

2021.04.15 デジタル改革関連5法案の衆議院本会議での採決に抗議する

【国会軽視も甚だしい】デジタル庁設置やマイナンバー利用拡大などを盛り込んだ「デジタル社会形成基本法案」をはじめとしたデジタル改革関連5法案が4月6日、衆議院本会議にて採決・可決された。デジタル改革関連6法案(自治体情報システム標準化法案含め)は、個人のプライバシー権などに多大な影響を孕むとともに、法案関連資料は2千頁以上に及び、十分に時間をかけた慎重な審議が求められている。にもかかわらず、法案関係資料で発覚した多数の誤りについて国会への報告は後回しにされた上、5法案を束ねて一括審議を求めるなど国会軽視の姿勢も甚だしいと言わざるを得ない。

 

【個人情報保護ないがしろに情報利活用】法案は、「個人情報」の定義(範囲)をより狭いものに変更した上で、個人情報保護3法を一元化し自治体独自の個人情報保護条例を実質上形骸化することなどを通じて、行政が持つ膨大な個人情報について企業等による利活用を大幅に推進する内容である。個人情報保護の理念・規定が決定的に欠落しており、本人の知らないところで、個人情報がやり取りされ、リクナビ事件に見られたような企業によるプロファイリングやスコアリングが野放図に拡大されていくことが懸念される。

 

【自治体独自の助成策の抑制・後退】また、法案では、自治体の情報システムの「共同化・集約の推進」「標準化」と称して、自治体の主要業務の情報システムを原則国が示す仕様に合わせるよう求めており、地域住民が築き上げてきた医療・介護・福祉等に関わる自治体単独事業や上乗せ・横出しサービスなどが抑制されることが強く危惧される。給付金支給や災害対応などを口実にマイナンバーと預貯金口座の紐付けを促す制度も盛り込まれている。「骨太の方針」が求める高齢者医療における金融資産に応じた患者負担増の仕組みの構築に向けて地ならしを進めるものである。

 

【官民癒着の強化、医療・社会保障削減に圧力】更に、マイナンバー利用拡大やデータ利活用を強力に進める司令塔として、首相をトップに据え、強い勧告権と巨額の予算を有するデジタル庁を創設するとしている。職員 500 人のうち100 人以上を民間企業より登用し、「デジタル監」は民間出身者を想定し、非常勤職員は兼業も許され、出身企業の給与補填も容認されるなど、政府と ICT 関連業界の癒着が一層強められ、巨大な利益誘導が図られることとなる。財源の負担は国民にしわ寄せされ、医療・社会保障費の更なる削減圧力が高まることも危惧される。  報道によれば、日本維新の会と与党の合意により、国と自治体の役割として「公正な給付と負担の確保」を加える法案修正がされるなど、医療・社会保障の削減を一層強める内容に改悪されている。 デジタル改革関連6法案については、個人情報保護規定の強化、自治体独自事業の存続・拡充の制度的保障、デジタル庁創設・マイナンバー利用拡大の撤回など抜本的修正がなされない限り、徹底審議の上で廃案とすることを強く求める。

2021.03.31 マイナンバーカードの保険証利用には強く反対し、無期延期を求める

厚生労働省は3月下旬より本格運用を開始するとしていたマイナバーカードの保険証利用について、社会保障審議会医療保険部会(3月26日開催)で本年10月まで運用を延期することを報告し、了承された。 
 この間、システムの本格稼働に向けて、3月4日より一部医療機関で試験運用が始まっていたが、資格情報の確認ができない等のトラブルが続出。同省によると、「加入者データの不備による資格確認エラー」「院内システムへの読み取りエラー」などを要因として挙げている。また、加入者データについては昨年10月以降、保険者においてオンライン資格確認システムへの登録が進められているが、「情報が登録されていない」と表示されるケースが相次いでいる。他人の医療情報が医療機関の端末に示される恐れがあり、正確な管理ができていない。極めてお粗末な事態と言わざるを得ない。
 3月23日時点で試験運用を行っている機関は全国24都道府県54施設。そもそも500機関で開始する予定であった試験運用自体が大幅に遅れており、カードリーダーの申請件数は病院で60.4%、医科歯科診療所で36%程度。マイナンバーカードの健康保険証としての利用申請件数も現時点で311万件、総人口の2.5%にも満たない。これら運用システムやデーター不備、導入医療機関数、健康保険証利用申請件数などいずれを見ても、運用開始できる実質的な体制が整っていないことは明らかである。
 政府は、運用日程ありきでオンライン資格確認システム導入の補助金事業等で医療機関に導入を急がせているが、このまま強引に運用拡大を進めても、現場の混乱は目に見えている。マイナンバーカードを健康保険証として利用させることは、医療現場に無用な混乱を招き、国民が安心して保険診療を受けることの障壁になると言わざるを得ない。
 本会は、医療情報とマイナンバーの紐づけがなし崩し的に拡大される事態に繋がるマイナンバーカードの保険証利用には強く反対し、無期延期を求める。そして、関係機関は従前通り、健康保険証で医療が受けられることを広く国民に周知するよう関係機関へ求めていく。

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